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損傷誘導性微小環境(ニッチ)因子Cxcl12およびShh/Ihhが頭頂骨の再生過程で縫合幹細胞の活性化を協調させる
Injury-induced niche factors Cxcl12 and Shh/Ihh coordinate suture stem cell activation during calvarial bone regeneration

SCIENCE SIGNALING
21 Oct 2025 Vol 18, Issue 909
DOI: 10.1126/scisignal.adw7107
Bo Li1, 2, †, Takehito Ouchi1, 3, †, Jie Liu1, Yingzi Yang1, *
- 1 Department of Developmental Biology, Harvard School of Dental Medicine, Harvard Stem Cell Institute, Boston, MA 02215, USA.
- 2 State Key Laboratory of Oral Diseases, National Center for Stomatology, National Clinical Research Center for Oral Diseases, Department of Orthodontics, West China Hospital of Stomatology, Sichuan University, Chengdu 610041, China.
- 3 Department of Physiology, Tokyo Dental College, Tokyo 1010061, Japan.
- † These authors contributed equally to this work.
- * Corresponding author. Email: Yingzi_Yang@hsdm.harvard.edu
Editor's summary
縫合幹細胞(SuSC)は、頭蓋顔面骨を維持し、修復する。Liらは、マウスの頭頂骨損傷の修復過程におけるSuSCの活性化、および頭蓋骨上部に沿って伸びる矢状縫合からの動員について調べた。損傷によって、損傷部では幹細胞微小環境(ニッチ)因子Cxcl12の産生が誘導され、それによってSuSC上にあるCxcl12受容体であるCxcr4が活性化され、SuSCの増殖と損傷部への動員が駆動された。また、Cxcl12はヘッジホッグファミリーのメンバーであるShhおよびIhhの産生も刺激し、それによってSuSCの増殖と骨芽細胞への分化がさらに促進された。これらのシグナル伝達経路を阻害する疾患関連変異は、患者と類似した頭蓋顔面骨欠損を引き起こした。—Annalisa M. VanHook
要約
幹細胞は、その細胞が存在する微小環境(ニッチ)によって、どのように損傷に応答して数を増やし、損傷部へ遊走し、失われた組織を再生するための細胞へ分化するかが決まる。縫合幹細胞(SuSC)は、頭頂骨の恒常性維持と再生に重要であり、骨再生のための遠隔での幹細胞制御について理解するためのモデルとして使用できる。われわれは、マウス頭頂骨損傷モデルを用いて、矢状縫合由来のSuSCのGli1+サブセットの増殖、指向性遊走、骨芽細胞分化を協調的に促進する損傷誘導性ニッチ因子としてケモカインCxcl12とヘッジホッグファミリーリガンドShhおよびIhhを同定した。Cxcl12はSuSCニッチで恒常的に産生され、損傷部で誘導され、Gli1+ SuSC上の同族受容体Cxcr4を活性化してGli1+ SuSCの増殖と損傷部への遊走を刺激した。また、Cxcl12-Cxcr4シグナル伝達はShhおよびIhhの産生も誘導し、これがGli1+ SuSCの増殖と骨芽細胞分化を促進した。さらに、頭頂骨欠損を特徴とする遺伝性疾患を引き起こすGタンパク質Gαsの機能欠失型変異体または機能獲得型変異体を発現させると、再生過程でCxcl12、Shh、およびIhhシグナル伝達に異常がみられ、ヒト患者と類似の頭頂骨表現型を呈した。これらの結果は、損傷誘導性ニッチ因子Cxcl12、Shh、IhhがSuSCの活性化と遊走を調整することによって損傷修復を促進することを示しており、このシステムの阻害が再生を損ない、ヒト疾患に関与していることを示唆している。
2025年10月21日号






