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転写因子HAT1の酸化還元制御がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において基底防御を制限し、感染に対する反応を促進する

Redox regulation of the transcription factor HAT1 limits basal defenses and promotes responses to infection in Arabidopsis thaliana

Research Article

SCIENCE SIGNALING
17 Mar 2026 Vol 19, Issue 929
DOI: 10.1126/scisignal.aea8478

Yuqing Zhao1, 2, †, Fan Wei1, †, Jiahong Lao1, †, Peiyi Zhang1, Tianyue Zhao1, Dongbei Guo1, Qing Han1, Honghui Lin1, 2, Dawei Zhang1, 2, *

  1. 1 Key Laboratory of Bio-resource and Eco-environment of Ministry of Education, Laboratory for Ex Situ Conservation and Resource Utilization of Mountain Plants, College of Life Sciences, State Key Laboratory of Hydraulics and Mountain River Engineering, Sichuan University, Chengdu, 610065, P.R. China.
  2. 2 Chengdu Botanical Garden, Chengdu, 610083, P.R. China.
  3. * Corresponding author. Email: zhdawei@scu.edu.cn
  4. † These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

免疫反応はエネルギーコストが高く、植物においては成長を損なわせる。Zhaoらは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において、転写因子TGA3を主要免疫制御因子NPR1から隔離することによって防御遺伝子の発現を制限する機構を明らかにした。病原体が存在しない状況では、転写因子HAT1のシステイン残基の酸化によってHAT1とTGA3の相互作用が促進され、病原体に誘導される遺伝子に結合するTGA3が減少した。感染時には、植物ホルモンであるサリチル酸の増加が転写因子HAT1のシステイン残基の還元を引き起こし、それによってHAT1から遊離したTGA3がNPR1と結合し、防御遺伝子の発現が駆動された。このように酸化還元制御機構によって、植物の防御遺伝子の発現は病原体による攻撃を受けるまで抑制される。—Annalisa M. VanHook

要約

植物は、成長と免疫の間でエネルギー配分のバランスを取るために、防御反応を精密に制御する。本研究でわれわれは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において、ホメオドメイン・ロイシンジッパータンパク質1(homeodomain-leucine zipper protein 1:HAT1)が転写因子TGA3との相互作用で主要免疫制御因子NPR1と競合することによって、防御反応を制限する酸化還元制御メディエーターとして機能することを明らかにした。通常の状況では、HAT1のCys196、Cys202、Cys242、Cys245が酸化的に修飾されることでTGA3に対する結合親和性が高まり、TGA3との結合においてNPR1と効果的に競合してTGA3を標的遺伝子から隔離し、免疫抑制を維持した。病原菌に応答して免疫が活性化されると、植物ホルモンであるサリチル酸がチオレドキシンTRXh3およびTRXh5によるHAT1の還元を促進し、それによってHAT1-TGA3相互作用を不安定化させた。また、サリチル酸は防御遺伝子の発現を活性化させるNPR1-TGA3複合体の形成も促進した。この酸化還元スイッチ機構は、HAT1の可逆的な酸化還元修飾を介して植物のTGA3転写活性の動的制御を可能にした。これらの知見は、HAT1が免疫の過剰な活性化を防ぎながら動的な反応調節を可能にする分子ブレーキとして機能する仕組みを解明するものである。

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