不整脈のシステム薬理学

Systems Pharmacology of Arrhythmias

Research Article

Sci. Signal., 20 April 2010
Vol. 3, Issue 118, p. ra30
[DOI: 10.1126/scisignal.2000723]

Seth I. Berger, Avi Ma'ayan, and Ravi Iyengar*

Department of Pharmacology and Systems Therapeutics and Systems Biology Center New York, Mount Sinai School of Medicine, One Gustave L. Levy Place, Box 1215, New York, NY 10029, USA.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: Ravi.Iyengar@mssm.edu

要約:QT延長症候群(LQTS)は、心臓の電気的活動が先天性または薬物誘導性に変化した疾患であり、致死性 不整脈をもたらすことがある。イオンチャネルおよび関連タンパク質をコードする12の遺伝子の変異が、先天性LQTSと関連がある。コンピュータを利用し たシステム生物学のアプローチを用いて、われわれは、ヒトインタラクトームにおいて、LQTSに関与する遺伝子産物が明確な機能的近傍群 (functional neighborhood)を形成することを見いだした。他の疾患も同様に選択的な近傍群を形成しており、LQTSの近傍群と他の疾患を中心とする近傍群 を比較したところ、一見したところでは関係のない心合併症のリスクを増大させる疾患の間に存在する関連性の分子基盤が示唆された。LQTSの近傍群と公開 された全ゲノム関連解析のデータを組み合わせることによって、QT間隔に影響を与える可能性が高い、これまで知られていなかった単一塩基多型が同定され た。有害事象としてLQTSを引き起こす米国食品医薬品局(FDA)承認薬の標的は、LQTS近傍群に濃縮されることが明らかになった。LQTS近傍群を 分類子として用いて、QTに作用するリスクを有する可能性が高い薬物を予測し、FDA有害事象報告システムを用いて、それらの予測を確認した。その結果、 ネットワーク解析によって、臨床使用されている薬物に付随する有害作用の検出がいかに向上しうるかが例示された。このように、ヒトのインタラクトームにお ける疾患選択的な近傍群の同定は、疾患に関与する新たな遺伝子多型の予測、薬物の有害副作用の根底にある複雑さの説明、ならびに新規薬物に対する有害事象 の感受性予測に有用である可能性がある。

S. I. Berger, A. Ma'ayan, R. Iyengar, Systems Pharmacology of Arrhythmias. Sci. Signal. 3, ra30 (2010).

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2010年4月20日号

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