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mTOR複合体1の慢性的活性化はマウスで肝細胞がんを引き起こすのに十分である

Chronic Activation of mTOR Complex 1 Is Sufficient to Cause Hepatocellular Carcinoma in Mice

Research Article

Sci. Signal., 27 March 2012
Vol. 5, Issue 217, p. ra24
[DOI: 10.1126/scisignal.2002739]

Suchithra Menon1, Jessica L. Yecies1, Hui H. Zhang1, Jessica J. Howell1, Justin Nicholatos1, Eylul Harputlugil1, Roderick T. Bronson2, David J. Kwiatkowski3, and Brendan D. Manning1*

1 Department of Genetics and Complex Diseases, Harvard School of Public Health, Boston, MA 02115, USA.
2 Rodent Histopathology Core, Dana-Farber-Harvard Cancer Center, Boston, MA 02115, USA.
3 Translational Medicine Division, Department of Medicine, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: bmanning@hsph.harvard.edu

要約:哺乳類のラパマイシン標的タンパク質(mTOR)複合体1(mTORC1)は、多くのヒトがんで異常に活性化される栄養感受性プロテインキナーゼである。しかし、正常組織のmTORC1シグナル伝達の調節異常ががんリスクを高めるのかどうかは不明である。本稿でわれわれは、mTORC1活性に影響を及ぼす環境因子(食事など)と関連する肝細胞がんに注目した。は、TSC1-TSC2複合体の一部として、mTORC1の上流抑制因子として機能する結節性硬化症複合体1(TSC1)をコードする遺伝子を欠失させると、mTORC1シグナル伝達が恒常的に亢進するが、この経路に対するこのような影響は肥満による影響と同様である。われわれは、肝臓特異的なTsc1のノックアウトを有するマウスで、組織学的および生化学的に不均一な特性を有する散発性の肝細胞がんが発症することを見出した。このマウスモデルでは、肝細胞がんの自然発症に先立って、ヒト肝細胞がんの主な要因に付随する一連の病理学的変化(肝障害、炎症、壊死、再生など)がみられた。慢性的なmTORC1シグナル伝達は、小胞体ストレスの未解消とオートファジーの異常を引き起こしたが、これらは肝細胞損傷および肝細胞がんの発症に寄与する因子である。したがって、われわれは、mTORC1の活性化の亢進は発がんを促進する可能性があり、それによってがんのリスクと食事などの環境因子とのあいだにある重要な分子的つながりを表しているのかもしれないと結論する。

S. Menon, J. L. Yecies, H. H. Zhang, J. J. Howell, J. Nicholatos, E. Harputlugil, R. T. Bronson, D. J. Kwiatkowski, B. D. Manning, Chronic Activation of mTOR Complex 1 Is Sufficient to Cause Hepatocellular Carcinoma in Mice. Sci. Signal. 5, ra24 (2012).

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