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哺乳類細胞シグナルとしてのイノシトールピロリン酸

Inositol Pyrophosphates as Mammalian Cell Signals

Reviews

Sci. Signal., 30 August 2011
Vol. 4, Issue 188, p. re1
[DOI: 10.1126/scisignal.2001958]

Anutosh Chakraborty1, Seyun Kim1, and Solomon H. Snyder1,2,3*

1 The Solomon H. Snyder Department of Neuroscience, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
2 Department of Pharmacology and Molecular Sciences, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.
3 Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21205, USA.

* Corresponding author: E-mail, ssnyder@jhmi.edu

要約:イノシトールピロリン酸は、粘菌および酵母から哺乳類に至るまでの生物に存在する高エネルギー性のイノシトールポリリン酸分子である。異なるクラスの酵素は、異なる型のイノシトールピロリン酸を産生する。これらの物質の生合成には、主にイノシトールヘキサキスリン酸(IP6)のリン酸化によるピロリン酸IP7の生成が関与している。イノシトールピロリン酸の機能に関する最初の洞察は、細胞性粘菌Dictyosteliumだけでなく、IP6キナーゼの単一アイソフォーム(yIP6K)を含む酵母から主に得られた。イノシトールピロリン酸の哺乳類における機能は、細胞株を用いて検討され、インスリン分泌やアポトーシスを含む様々な過程における役割が確立された。より最近では、IP6Kアイソフォームおよび近縁のイノシトールポリリン酸マルチキナーゼ(IPMK)を標的欠損するマウスによって、イノシトールポリリン酸の生理学に関するわれわれの理解がかなり向上した。イノシトールヘキサキスリン酸キナーゼ1(IP6K1)を欠損するマウスにおける表現型の変化から、インスリン恒常性、肥満、および免疫機能において、これらの分子がシグナル伝達の役割を持つことが明らかになった。イノシトールピロリン酸は、セリントレオニンキナーゼAktの活性化を抑制することによって、これらの過程を少なくとも部分的に調節する。IP6K2に関する同様の研究から、この酵素が、アポトーシス促進タンパク質p53を刺激することによって作用する細胞死誘導因子であることが確立された。IPMKは、イノシトールリン酸IP5の産生に関与するだけでなく、Aktの活性化に関与するホスファチジルイノシトール3-キナーゼ活性も有する。今回われわれは、イノシトールピロリン酸の生理学的機能の理解における最近の進歩について議論する。これは、かなりの部分が、IP6Kアイソフォーム欠損マウスにおける研究に基づいている。これらの発見は、増殖因子および栄養を介する細胞シグナル伝達の調節におけるIPMKとIP6Kの相互関係を協調するものである。

A. Chakraborty, S. Kim, S. H. Snyder, Inositol Pyrophosphates as Mammalian Cell Signals. Sci. Signal.4, re1 (2011).

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