癌免疫療法について
免疫療法は、癌研究の分野で急速に成長している領域であり、新たな治療法として期待されています。ここ数年、様々な癌がどのように免疫監視機構を回避するのかについて、いくつかの知見が得られています。
生涯で癌に罹患する確率は、3人に1人であると言われています。高確率であるように感じられますが、統計から 2/3 は癌を発症しないことも明らかであり、実際には癌に対してかなり抵抗力があると言えます。その理由の一つとして、免疫監視機構として知られる多様なプロセスを介して、癌などの「非自己」を認識するために最適化された、適応免疫(獲得免疫)があげられます。このシステムにより、癌化した細胞は、実際に悪影響を与える前に体内から排除されます。しかし、癌が免疫監視機構を何らかの方法で乗っ取り、有利に利用する場合があります。
がん免疫逃避機構
そのメカニズムの一つは、PD-1(programmed cell death-1)と呼ばれる受容体と、そのリガンドである PD-L1(programmed cell-death ligand 1)が関与しています。
この2つの分子は、活性化されたTリンパ球(PD-1 の場合)および組織細胞(PD-L1 の場合)の表面に、それぞれ発現します。PD-1 と PD-L1 が結合すると自己の認識が行われ、健康な組織では免疫応答が抑制されます。このメカニズムは、免疫系からの自己に対する攻撃を避けるための手段であり、悪性腫瘍の治療の標的として非常に期待されています。いくつかの癌では、PD-L1 発現のアップレギュレートが確認されており、PD-1との相互作用による免疫応答の抑制を有利に利用していると考えられます。
研究の進展
PD1/L1 結合が、ある種の癌にとって生存に有利に働くことが明らかになり、様々な癌における PD-L1 発現プロファイルや、PD-1/L1 結合を阻害する方法が研究されてきました。例えば、卵巣癌および乳癌において、リガンドタンパク質が過剰発現していることがわかっており、PD-L1 の発現は、乳癌患者の予後に相関する ことが示されています。 PD-L1 の発現は、黒色腫、肺癌、大腸癌、膀胱癌、子宮頚癌、肝臓癌、頭頸部癌、神経膠芽腫などの、単離されたヒト癌にも見られます。PD-L1 と PD-1 の結合を阻害する治療用抗体である nivolumab は、黒色腫及び非小細胞肺癌(NSCLC)などの癌で効果が認められています。2012 年から 2014 年にかけて報告された nivolumab に関する論文やその他の PD1/L1 標的抗体は、大変注目されており、6月には、進行性黒色腫の治験や肺癌研究において、Merck 社の Pembrolizumab が非常に高い効果を示したという報告がありました。また、Genentech-Roche 社のモノクローナル抗体製剤 MPDL3280A も、PD-L1 陽性の膀胱癌治療に有効であることが示されています。
これらの報告や臨床データから、今後、PD-1/L1 結合を阻害する免疫療法の有効性を調べる検査 が一般的になると予測されます。全ての癌の患者に対して、治療法を最初に判断する方法となる可能性があります。
PD-L1 抗体
Proteintech 社の抗 PD-L1 抗体は、ELISA、WB、IHC、IF で検証済みです
2014年5月に European Journal of Cancer で報告された研究 では、肺腺癌患者における PD-L1 発現と無再発生存期間(RFS)の相関に着目しています。この論文は、抗 PD-L1 抗体が初めてピアレビュー誌に掲載されたことから、Proteintech 社にとって画期的な報告となりました。腺癌 I 期の患者 163 人に対して外科的摘出を行い、抗 PD-L1 抗体で免疫組織化学染色した結果、ALK のアップレギュレートが示されました。また、EGFR、KRAS、BRAF などの既知の悪性腫瘍ドライバー変異の配列決定を行ったことが報告されています。
PD-L1 の過剰発現は、検査症例の 39.9% に認められ、分化や血管浸潤のグレードが高い腫瘍において高発現を示しました。PD-L1 発現は、EGFR、KRAS、BRAF、ALK 発現とは関連が認められませんでした。また、肺腺癌の症例では、PD-L1 発現が実際は良好な無再発生存率と相関することが分かりました。PD-L1 は、RFS の予後指標として使用できる可能性があり、PD1/L1 結合を阻害する免疫療法の確立や、腺癌患者の無再発生存率の向上に役立つと考えられます。
■ Proteintech Group(プロテインテック)とは?
Proteintech Group, Inc.(プロテインテック)社は、2001年に設立された抗体製造メーカーです。現在までに、米国本社の他、英国、中国、ドイツ、フランス、シンガポール等で支社を展開し、各国で様々なマーカー抗体、タンパク質研究用試薬を供給しています。国内におけるテクニカルサポート等は、2016年より株式会社プロテインテック・ジャパン(www.ptglab.co.jp )が担当しています。
- 全てオリジナル商品:自社ラボで製造、検証済み(購入後1年間の交換保証付き)
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