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神経変性
PP2Aがアルツハイマーを助ける

NEURODEGENERATION
PP2A to Alzheimer’s rescue

Editor's Choice

Sci. Signal. 29 Mar 2016:
Vol. 9, Issue 421, pp. ec71
DOI: 10.1126/scisignal.aaf7580

Sudhakaran Prabakaran and Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. E. Nicholls, J.-M. Sontag, H. Zhang, A. Staniszewski, S. Yan, C. Y. Kim, M. Yim, C. M. Woodruff, E. Arning, B. Wasek, D. Yin, T. Bottiglieri, E. Sontag, E. R. Kandel, O. Arancio, PP2A methylation controls sensitivity and resistance to β-amyloid–induced cognitive and electrophysiological impairments. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113, 3347–3352 (2016). [PubMed]

セリン/スレオニンプロテインホスファターゼPP2Aは、足場サブユニット、触媒サブユニット、調節サブユニットで構成されるヘテロ三量体タンパク質である。PP2Aの機能低下は、アルツハイマー病に関与するとされている。PP2A触媒サブユニットのC末端メチル化により、ホロ酵素の形成が促進され、メチル化PP2Aは、アルツハイマー病に関連するタンパク質であるタウに対して高い活性をもつ。ロイシンカルボキシルメチルトランスフェラーゼ1(LCMT-1)はPP2Aをメチル化し、プロテインホスファターゼメチルエステラーゼ1(PME-1)はPP2Aを脱メチル化する。Nichollsらは、アルツハイマー病の影響を受ける海馬を含む、前脳のニューロンにおいて、FLAG標識PME-1またはFLAG標識LCMT-1のいずれかを過剰発現する、2種類のトランスジェニックマウスを作製した。これらのマウスの海馬ライセートのウエスタンブロット解析により、PME-1トランスジェニックマウスでは、PP2Aメチル化が低下し、PP2Aの標的となる部位でタウリン酸化が増加していることが示された。一方、LCMT-1トランスジェニックマウスでは、PP2Aメチル化に変化がなかったが、これは、野生型マウスでもPP2Aメチル化が高いことが原因と考えられる。対照マウスと比較して、いずれの種類のトランスジェニックマウスにおいても、アルツハイマー病の病態の要因であるアミロイドペプチドAβの量は同程度で、学習と記憶に関連するシナプス可塑性の指標である、長期増強(LTP)を発生させる能力は同程度であった。しかし、文脈的恐怖条件付け課題と水迷路課題を行ったところ、病的濃度の合成オリゴマーβ-アミロイド(Aβ)を投与したPME-1トランスジェニックマウスでは、PME-1を過剰発現していない、またはAβを投与していない対照マウスと比べて、成績が不良であった。一方、病的濃度のAβを投与したLCMT-1トランスジェニックマウスでは、成績がより良好であった。さらに、行動試験での応答に一致して、LCMT-1トランスジェニックマウスでは、Aβを介するLTP障害からの防御が認められ、PME-1トランスジェニックマウスでは、AβによるLTP障害に対する感受性の増大が認められた。このことから、病的Aβによって引き起こされるシナプス障害に対する動物の感受性を、PME-1は増大させ、LCMT-1は低下させることが示された。したがって、この研究では、PP2A活性の増強により、Aβ産生そのものではなくAβの毒性が低下することが示唆されたことから、Aβの毒性作用は、Aβ産生を低下させる必要なく、治療的に緩和されるのではないかと考えられる。

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2016年3月29日号

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神経変性
PP2Aがアルツハイマーを助ける

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