- ホーム
- 発生生物学 Fatの機能を分ける
発生生物学
Fatの機能を分ける
Developmental Biology
Separating Fat Functions
Sci. Signal., 5 February 2013
Vol. 6, Issue 261, p. ec32
[DOI: 10.1126/scisignal.2004031]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
G. Pan, Y. Feng, A. A. Ambegaonkar, G. Sun, M. Huff, C. Rauskolb, K. D. Irvine, Signal transduction by the Fat cytoplasmic domain. Development 140, 831-842 (2013). [Abstract] [Full Text]
Fatは非典型的なカドヘリンであり、Hippo増殖制御経路と平面内細胞極性(PCP)経路のどちらにも関与する。ハエにおける研究から、多くのインプットが、キナーゼWarts(Wts)のレベルでHippoシグナル伝達を活性化できることが示唆された。Wtsは、転写因子Yorkieをリン酸化して核から排出する。Fatは、Wts活性を抑制するミオシンであるDachsの分布を変化させることによって、Hippoシグナル伝達に影響を与える。PCP経路を介するシグナル伝達は、ある細胞上のFat分子が、近隣細胞に由来する非典型的カドヘリンDachsous(Ds)に結合すると活性化される。Fatは組織中に均一に分布しているが、Dsは組織内で勾配を形成して分布している。Dachsの適切な膜局在化および適切な極性形成にはFatの極性をもった活性化が必要である。DachsとFatのHippoシグナル伝達に対する影響が、膜に存在するこれらのタンパク質の量によって決まるのに対して、PCPシグナル伝達に対するそれらの影響は、それらの極性が形成されている方向によって決定されると提唱されている。Panらは、Hippoシグナル伝達とPCPシグナル伝達にそれぞれ特異的に関与するFat細胞内ドメインの別個の領域を同定した。この研究では、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の細胞内ドメインの様々な領域を欠失するFat変異型が、fat変異体の翅原基における増殖(Hippo)およびパターン形成(PCP)の障害を救済する能力について検討された。翅原基においてHippoシグナル伝達を抑制すると野生型よりも大きな翅が生じたのに対して、PCPシグナル伝達を抑制すると野生型よりも短く、翅毛局在化が乱された翅が生じた。FatのC末端の4アミノ酸は、最適なFat-PCPシグナル伝達に必要であったが、Fat-Hippoシグナル伝達には必須ではなかった。このモチーフは、PCPシグナル伝達に関与するがHippoシグナル伝達には関与しないマウスFat4で保存されている。細胞内ドメイン中央部の別のドメインは、Fat-Hippoシグナル伝達に必要であったが、Fat-PCPシグナル伝達にはほとんど影響を与えなかった。このドメインは、カゼインキナーゼ1εのショウジョウバエ(Drosophila)ホモログであるDiscs overgrown(Dco)によるリン酸化部位と考えられる部位(Fat-Hippoシグナル伝達に必要)と重複していた。HippoおよびPCPシグナル伝達経路におけるFat活性の違いを生じさせる機構の正確な詳細はまだはっきりしないが、2つの経路のFat活性は、その存在量あるいは分布だけではなく、シグナル伝達の分子的相違に基づいている。
A. M. VanHook, Separating Fat Functions. Sci. Signal. 6, ec32 (2013).