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加齢
低温での転写による長寿

Aging
Longevity Through Cold Transcription

Editor's Choice

Sci. Signal., 26 February 2013
Vol. 6, Issue 264, p. ec49
[DOI: 10.1126/scisignal.2004093]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Xiao, B. Zhang, Y. Dong, J. Gong, T. Xu, J. Liu, X. Z. S. Xu, A genetic program promotes C. elegans longevity at cold temperature via a thermosensitive TRP channel. Cell 152, 806-817 (2013). [PubMed]

低温は、冷血動物(ショウジョウバエ[Drosophila]、魚類、線虫など)でも温血動物(マウスなど)でも寿命を延長させる。代謝率の低下により加齢過程が減速する受動的な作用ではなく、Xiaoらは、線虫(Caenorhabditis elegans)において、低温が寿命を延長させる能動的な転写応答を誘導することを示した。低温では、アンキリンドメインを有する低温感受性一過性受容体電位(TRP)陽イオンチャネル(TRPA-1)を欠損した線虫の寿命が、野生型の線虫よりも短かった。trpa-1の過剰発現によって、低温条件下で寿命が延長したが、変異したカルシウム非透過性受容体では寿命延長はみられず、TRPA-1を介する長寿にはカルシウム流入が不可欠であることが示唆された。さらに、ニューロンまたは腸細胞において、trpa-1の過剰発現により寿命が延長したことから、非興奮性の腸細胞が低温を感知する役割を果たすことが示唆された。trpa-1の過剰発現によって、フォークヘッドボックス(FOXO)転写因子ファミリーのC. elegansオルソログであるDAF-16の転写活性も促進された。変異線虫の解析により、カルシウム流入はカルシウム感受性のプロテインキナーゼC2(PKC-2)を活性化し、PKC2の下流では、血清/グルココルチコイド調節キナーゼ1(SGK-1)が、TRPA1誘導性の長寿とDAF-16の活性化に必要であることが明らかになった。DAF-16の欠失により、TRPA-1、PGC-2、またはSGK-1を過剰発現したトランスジェニック線虫の長寿促進が消失したが、過剰発現によって、TRPA-1、PGC-2、またはSGK-1の機能が低下した変異体のより短い寿命が回復した。興味深いことに、C. elegansにヒトTRPA-1を発現させた場合にも低温で寿命が延長し、この機構はヒトにおいて保存されている可能性が示唆された。さらに、TRPA-1アゴニストを投与すると暖温でも線虫の寿命が延長し、これはTRPA-1の過剰発現のみでは観察されなかったことから、活性化されたTRPA-1の長寿促進における役割が明確になった。

L. K. Ferrarelli, Longevity Through Cold Transcription. Sci. Signal. 6, ec49 (2013).

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2013年2月26日号

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