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代謝
同じホルモン、異なる作用

Metabolism
Same Hormone, Different Actions

Editor's Choice

Sci. Signal., 2 July 2013
Vol. 6, Issue 282, p. ec147
[DOI: 10.1126/scisignal.2004469]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

α細胞によって放出されるグルカゴンは、肝臓において、その受容体であるGタンパク質共役受容体(GPCR)を活性化し、GPCRがタンパク質キナーゼA(PKA)を刺激することによって肝糖産生を亢進させる。正常な状態では、血漿中グルカゴン濃度を人工的に高値に維持してもこの肝糖産生は持続しない。しかし、糖尿病の状態では慢性高グルカゴン血症は高血糖を促進する。グルカゴンは視床下部に結合部位をもつため、Mighiuら(EdgertonおよびCherringtonも参照)はグルカゴンの作用における視床下部の役割を検討した。イムノブロッティングおよび免疫組織化学法によって内側基底視床下部(MBH)にグルカゴン受容体が検出された。ラットのMBHにグルカゴンを投与すると、正常血糖クランプ条件下ではブドウ糖注入速度(組織によるブドウ糖取込みの指標)が増加するとともにインスリン感受性の指標である肝糖産生が減少し、また非クランプ条件下では耐糖能が改善した。MBHへのグルカゴン投与による糖注入速度の増加および肝糖産生の減少は、グルカゴン受容体に対する抗体またはグルカゴン受容体アンタゴニストをMBHに注入すると減弱した。MBHへのグルカゴン注入による肝糖産生の抑制にはMBHにおけるPKA活性および肝臓の迷走神経支配が必要であった。インスリンおよび糖濃度が定常状態にある場合、グルカゴンの静注によって中枢の高グルカゴン血症を誘発すると、肝糖産生が一時的に増加し、グルカゴン受容体アンタゴニストをMBHに注入すると、この増加が維持された。グルカゴン受容体アンタゴニストまたはPKA阻害剤をMBHに注入すると、生理食塩水を注入したラットに比べ、グルカゴンの静注による血漿中糖濃度の増加が大きく、MBHにおけるPKA活性は増加しなかった。また、高脂肪食を摂取させたラットでは正常食摂取ラットと比べて、グルカゴン静注による血漿中糖濃度の増加が顕著で、正常血糖クランプ条件下でこれらのラットのMBHへグルカゴンを注入すると、糖注入速度の増加、肝糖産生の減少、MBHにおけるPKAの活性化は認められなかった。グルカゴンが肝臓で受容体と結合すると、肝糖産生が増加するが、グルカゴンが視床下部で受容体と結合すると、肝糖産生の増加を制限する。このシグナル伝達経路は高脂肪食によって遮断されると考えられる。

W. Wong, Same Hormone, Different Actions. Sci. Signal. 6, ec147 (2013).

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2013年7月2日号

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