• ホーム
  • 細胞生物学 アルギニンメチル化がBMPシグナル伝達を抑制解除する

細胞生物学
アルギニンメチル化がBMPシグナル伝達を抑制解除する

Cell Biology
Arginine Methylation Derepresses BMP Signaling

Editor's Choice

Sci. Signal., 16 July 2013
Vol. 6, Issue 284, p. ec159
[DOI: 10.1126/scisignal.2004510]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Xu, A. H. Wang, J. Oses-Prieto, K. Makhijani, Y. Katsuno, M. Pei, L. Yan, Y. G. Zheng, A. Burlingame, K. Brückner, R. Derynck, Arginine methylation initiates BMP-induced Smad signaling. Mol. Cell 51, 5–19 (2013). [PubMed]

X. Guo, X.-F. Wang, A P(E)RM(I)T for BMP signaling. Mol. Cell 51, 1–2 (2013). [Online Journal]

骨形成タンパク質(BMP)はトランスフォーミング成長因子βファミリーの分泌タンパク質で、セリンスレオニンキナーゼの2つの受容体(BMPRIおよびBMPRII)を介して働き、形態形成と発生を誘導する(Guo and Wangのcommentary参照)。BMPはBMPRIIに結合し、これがBMPRIをリン酸化して活性化し、それによってエフェクタータンパク質のSmad1およびSmad5をリン酸化する。さらにこれらのSmadはBMPRIに動員され、ここでSmad4と会合して三量体複合体を形成し、これが核に移行して標的遺伝子の発現を活性化する。Smad6は、シグナル伝達を阻害するフィードバック機構の一環として、BMPRIとの結合についてSmad1およびSmad5と競合する。BMPRの活性化に応答したエフェクターSmadのリン酸化は、受容体チロシンキナーゼの基質のリン酸化よりも遅いという所見から、Xuらは、BMPシグナル伝達のためにはSmadリン酸化の前に追加ステップが必要か否かを調べた。様々なヒト細胞株においてタンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ1(PRMT1)をノックダウンしたとき、Smad1およびSmad5のBMP4依存性のリン酸化、Smad1の核内移行、およびBMP標的遺伝子の発現が抑制された。免疫共沈降実験からPRMT1はSmad6と会合し、それ以外のSmadとは会合しないことが示され、またin vitro実験からは、PRMT1は主にSmad6のArg74をメチル化することが示された。細胞内ではBMP4がPRMT1とSmad6の間の一過性の会合を刺激し、それにより、Smad1およびSmad5のBMP誘導性リン酸化よりも早い反応速度で、Smad6のメチル化が生じた。タンパク質-タンパク質相互作用のさらなる解析から、非刺激細胞ではSmad6がBMPRIと会合し、PRMT1はBMPRIIと会合することが明らかにされた。BMP4はBMPRIとBMPRIIの会合を刺激し、PRMT1をSmad6に近づけ、結果的にSmad6のアルギニンメチル化、そのBMPRIからの解離、およびBMPRIIとの会合の増大を生じさせた。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞の実験から、PRMT1のオルソログであるDart1はSmad6のオルソログであるDadをメチル化し、Dart1は翅発生においてDadの作用と拮抗することが示された。まとめると、これらのデータは、PRMT1によるBMP依存性のSmad6のアルギニンメチル化は、Smad1とSmad5のリン酸化と活性化を可能にすることで、BMPシグナル伝達の抑制を解除することを示唆している。

J. F. Foley, Arginine Methylation Derepresses BMP Signaling. Sci. Signal. 6, ec159 (2013).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2013年7月16日号

Editor's Choice

細胞生物学
アルギニンメチル化がBMPシグナル伝達を抑制解除する

Research Article

推定されるシグナル伝達ネットワークに基づいて受容体型チロシンキナーゼは独自のクラスに分類される

上咽頭がんにおいてマクロファージのCCAAT/エンハンサー結合タンパク質δは免疫抑制に寄与し貪食を阻害する

腫瘍壊死因子受容体2細胞内ドメインからの非筋肉ミオシンIIの遊離は標的遺伝子の発現に必要

最新のEditor's Choice記事

2024年2月27日号

ccRCCでTBK1を遮断する方法

2024年2月20日号

密猟者がT細胞内で森の番人に転身した

2024年2月13日号

RNAが厄介な状況を生み出す

2024年2月6日号

細胞外WNT伝達分子

2024年1月30日号