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神経科学
痛みを伴う長鎖ノンコーディングRNA
Neuroscience
Painful Long Noncoding RNA
Sci. Signal., 6 August 2013
Vol. 6, Issue 287, p. ec181
[DOI: 10.1126/scisignal.2004591]
Nancy R. Gough
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
X. Zhao, Z. Tang, H. Zhang, F. E. Atianjoh, J.-Y. Zhao, L. Liang, W. Wang, X. Guan, S.-C. Kao, V. Tiwari, Y.-J. Gao, P. N. Hoffman, H. Cui, M. Li, X. Dong, Y.-X. Tao, A long noncoding RNA contributes to neuropathic pain by silencing Kcna2 in primary afferent neurons. Nat. Neurosci. 16, 1024–1031 (2013). [PubMed]
T. W. Han, L. Y. Jan, Making antisense of pain. Nat. Neurosci. 16, 986–987 (2013). [PubMed]
神経因性疼痛および異痛は、それぞれ、損傷から末梢感覚神経に伝わり、その結果、過剰なニューロン活動を引き起こす慢性痛および無侵害性の刺激に応答する疼痛である。電位開口型カリウムチャネルはニューロン興奮性の主要なゲートキーパーの役割を果たす(HanおよびJan参照)。Zhaoらは、ラットやヒトなど数種の哺乳類の後根神経節(DRG)で、Kcna2カリウムチャネル(Kv1.2とも呼ばれる)をコードするKcna2遺伝子からアンチセンス方向に転写される長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)を同定した。in situ解析の結果、彼らによってKcna2 antisense RNAと名付けられたこのアンチセンス転写がDRGニューロンに認められ、Kcna2タンパク質との二重標識から逆相関が示された。著者らは、Kcna2 antisense RNAコード遺伝子のプロモーターにおける転写因子MZF1のコンセンサス結合部位を特定し、クロマチン免疫沈降実験の結果、MZF1がプロモーターに結合していることが示された。脊髄神経結紮によって、MZF1とKcna2 antisense RNAプロモーターの結合が亢進し、Kcna2 antisense RNA陽性ニューロンの染色強度および数が増加し、これらのニューロン中のKcna2 mRNA量およびタンパク質量が減少した。Kcna2 antisense RNAを発現するベクターを、陽性ニューロンを標識する蛍光タンパク質を発現するベクターとともにDRGに注入すると、電位開口型カリウム電流が減少し、静止膜電位が増加し、誘発活動電位が増加したことから、ニューロン興奮性の亢進が示された。また、ラットでは、注射側の足の寒冷刺激および機械刺激に対する感受性が増加した。培養DRGニューロンに導入するとMZF1によるKcna2 antisense RNAの増加およびKcna2 mRNAの減少を阻害するKcna2配列を含むベクターをin vivoでDRGに注入すると、神経結紮または損傷後のこれら2つの反応が遮断された。また、このKcna2 antisense RNA遮断ベクターを注入したラットでは、神経損傷後の過敏性反応が減弱した。以上、神経損傷はlncRNAの産生を亢進させることによりカリウムチャネル量を減少させ、その結果、ニューロン興奮性および疼痛感受性が亢進する。
N. R. Gough, Painful Long Noncoding RNA. Sci. Signal. 6, ec181 (2013).