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発生神経科学
ママが感染した場合に予測すべきこと

Developmental Neuroscience
What to Expect When Mom Is Infected

Editor's Choice

Sci. Signal., 19 November 2013
Vol. 6, Issue 302, p. ec279
[DOI: 10.1126/scisignal.2004917]

Jason D. Berndt

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Gallagher, A. A. Norman, C. L. Woodard, G. Yang, A. Gauthier-Fisher, M. Fujitani, J. P. Vessey, G. I. Cancino, N. Sachewsky, K. Woltjen, M. P. Fatt, C. M. Morshead, D. R. Kaplan, F. D. Miller, Transient maternal IL-6 mediates long-lasting changes in neural stem cell pools by deregulating an endogenous self-renewal pathway. Cell Stem Cell 13, 564–576 (2013). [PubMed]

E. C. Cope, E. Gould, Cytokines make an indelible impression on neural stem cells. Cell Stem Cell 13, 507–508 (2013). [PubMed]

ヒトにおいて、妊娠中の母親の感染は、生まれてくる子の精神神経疾患のリスク因子と推定される。感染は、炎症促進性シグナルを引き起こす。出生前に炎症に曝されて永続的な神経学的変化が生じる場合には、インターロイキン6(IL-6)などの炎症性サイトカインが胎児の脳の発生に影響する可能性がある(CopeおよびGould参照)。マウスにおいて、妊娠中のメス親に抗ウイルス性シグナル伝達を刺激する試薬を注射して炎症性サイトカイン(IL-6)を阻害すると、出生後の仔マウスの脳欠損と行動異常を回復させることができる。Gallagherらは、IL-6を単回ボーラス投与された妊娠マウスから生まれた生後2ヵ月の仔マウスにおいて、前脳の脳室下帯(SVZ)で増殖中の神経前駆細胞(NPC)の数が増加しているとともに、これらの細胞から分化する嗅覚介在ニューロンの数も増加していることを見出した。母体にIL-6を注射してから1日後の胎仔の脳の前脳前駆細胞、またはIL-6で処理した培養前脳前駆細胞では、細胞増殖の亢進と、IL-6受容体(IL6R)活性化の標的であるSTAT3(シグナル伝達性転写因子3)のリン酸化の増加がみられた。IL-6を注射されたメス親から生まれた生後7日の仔マウスの脳に由来するSVZのNPCでは、ニューロスフェア開始細胞(neurosphere-initiating cell)の数が増加し、継代培養後の2次ニューロスフェアの形成能が向上していた。内在性IL-6が胚性皮質前駆細胞の培養液に分泌されており、これらの細胞を機能阻害IL-6抗体とともに培養すると、増殖が低下した。Il6ノックアウトマウスの前脳では、増殖中の前駆細胞が減少しており、前駆細胞が培養1次ニューロスフェアおよび2次ニューロスフェアを形成する能力も低下していた。in vivoにてIL6RをsiRNAエレクトロポレーションでノックダウンさせると、胚性前脳前駆細胞の数は減少し、ニューロンの数は増加した。このように、母体のIL-6への曝露は、胚性前脳前駆細胞の自己複製の促進と時期尚早な神経分化の防止に必要である内在性IL-6シグナル伝達経路を亢進したことから、母体感染によって生じる神経疾患の要因となっている可能性がある。

J. D. Berndt, What to Expect When Mom Is Infected. Sci. Signal. 6, ec279 (2013).

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2013年11月19日号

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