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細胞代謝
長鎖非コードRNAによる代謝の再プログラミング
Cellular Metabolism
Metabolic Reprogramming with a Long Noncoding RNA
Sci. Signal., 21 January 2014
Vol. 7, Issue 309, p. ec16
[DOI: 10.1126/scisignal.2005088]
Nancy R. Gough
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
F. Yang, H. Zhang, Y. Mei, M. Wu, Reciprocal regulation of HIF-1α and lincRNA-21 modulates the Warburg effect. Mol. Cell 53, 88–100 (2014). [PubMed]
低酸素条件にさらされた細胞は、低酸素誘導因子(HIF)ファミリー転写因子により媒介される適応応答を開始する。この低酸素再プログラミングに関連した変化は、酸化的リン酸化に比べて解糖への依存性が増加することであり、これはWarburg効果と呼ばれる代謝シフトで、腫瘍の増殖と関連している。生物情報学的解析により、Yangらは、プロモーターに低酸素応答エレメントをもつ6つの長鎖非コードRNA(lncRNAあるいはlincRNA、それぞれ遺伝子内あるいは遺伝子間にコードされている)を同定し、いくつかのヒト細胞株あるいは初代細胞培養におけるリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)解析により、lincRNA-p21のみが低酸素で増加することを示した。lincRNA-p21のノックダウンは、代謝の低酸素誘導性変化を妨げ、それはHIF-1αの異所発現あるいは耐性lincRNA-p21コンストラクトにより救済された。低酸素条件にさらされた細胞において、lincRNA-p21のノックダウンはHIF-1αタンパク質を減少させ、HIF-1αをコードするmRNAの存在量を変化させることなしにHIF-1αのより速い分解をもたらした。lincRNA-p21および、ユビキチン-プロテアソーム経路による分解のためHIF-1αに印をつけるユビキチンリガーゼであるVHLの両方をノックダウンした細胞では、HIF-1αが安定化され、lincRNA-p21がこのHIF-1αの分解経路を阻害することを示唆した。複数のin vitro結合アッセイによりlincRNA-p21がHIF-1αおよびVHLの両方と相互作用することが示され、VHL欠失変異体を用いた実験は、lincRNA-p21がVHLのHIF-1αとの結合領域に結合し、これら2つのタンパク質間相互作用を競合阻害する可能性を示唆した。HIF-1αのノックダウンは、低酸素誘導性のlincRNA-p21存在量の増加を減少させ、クロマチン免疫沈降実験およびプロモーターリポーターアッセイにより、lincRNA-p21がHIF-1αの直接の転写標的であることを確かめられた。低酸素に暴露された細胞を注射されたマウスのジェノグラフトモデルでは、lincRNA-p21のノックダウンは、腫瘍増殖およびWarburg効果に関連したタンパク質存在量の変化を減少させた。このように、lincRNA-p21は、低酸素に応答したHIF-1αの安定性を増加させる正のフィードバックループの一部として機能する。
N. R. Gough, Metabolic Reprogramming with a Long Noncoding RNA. Sci. Signal. 7, ec16 (2014).