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がん
NF-κBの融合による脳腫瘍

Cancer
Brain Tumor by NF-κB Fusion

Editor's Choice

Sci. Signal., 4 March 2014
Vol. 7, Issue 315, p. ec61
[DOI: 10.1126/scisignal.2005230]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. Parker, K. M. Mohankumar, C. Punchihewa, R. Weinlich, J. D. Dalton, Y. Li, R. Lee, R. G. Tatevossian, T. N. Phoenix, R. Thiruvenkatam, E. White, B. Tang, W. Orisme, K. Gupta, M. Rusch, X. Chen, Y. Li, P. Nagahawhatte, E. Hedlund, D. Finkelstein, G. Wu, S. Shurtleff, J. Easton, K. Boggs, D. Yergeau, B. Vadodaria, H. L. Mulder, J. Becksford, P. Gupta, R. Huether, J. Ma, G. Song, A. Gajjar, T. Merchant, F. Boop, A. A. Smith, L. Ding, C. Lu, K. Ochoa, D. Zhao, R. S. Fulton, L. L. Fulton, E. R. Mardis, R. K. Wilson, J. R. Downing, D. R. Green, J. Zhang, D. W. Ellison, R. J. Gilbertson, C11orf95–RELA fusions drive oncogenic NF-κB signalling in ependymoma. Nature 506, 451–455 (2014). [PubMed]

核因子kB(NF-κB)経路を通したシグナル伝達の増強は多くのがんと関連するが、この経路に影響を与える変異はまれである。Parkerらは、上衣細胞腫(神経幹細胞から生じる脳腫瘍の一種)の全ゲノム解析を実施し、転写因子NF-κBのサブユニットをコードするRELAと、脂肪腫において転写因子をコードする別の遺伝子と融合していることが観察されている性質がよくわかっていない遺伝子C11orf95が関与する染色体転座を同定した。融合タンパク質の転写産物とタンパク質の存在は、いくつかの腫瘍で確認され、転座イベントは小脳より上にある(テント上の)脳領域に位置する腫瘍でしか生じなかった。野生型RELAおよび融合転写産物の選択的スプライシングから生じる4種類のC11orf95-RELA融合タンパク質は、いずれもテント上上衣細胞腫ST3細胞で検出されたが、融合タンパク質は、核に優先的に蓄積していた。293T細胞において野生型RELA(RELAWT)またはC11orf95-RELA融合タンパク質(RELAFUS1)を発現させた結果、内因性RELAはNF-κBレポーター遺伝子を活性化するのに刺激が必要であるのに対し、RELAFUS1は、内因性RELAと同等の量で発現されても、核に移行し、レポーターを恒常的に活性化することが示された。マイクロアレイ分析から、RELAFUS1またはRELAWTをマウス神経幹細胞(NSC)に導入した場合に、融合タンパク質によりNF-κB転写プロファイルが活性化され、野生型RELAよりも大きな活性化がもたらされることが示されたが、C11orf95を導入した場合にはそのようなことはなかった。赤色蛍光タンパク質タグを付加したRELAWT、RELAFUS1、またはRELAFUS2を発現しているNSCをマウスに脳内移植すると、融合タンパク質は発がん性をもち、結果として、上衣細胞種の形態学的特徴を有し、活性化され核に局在化する融合タンパク質を有する腫瘍が形成されることが示された。YAP1は、染色体転座によるC11orf95との融合タンパク質として一部の腫瘍に見出される別の転写因子であり、この転写タンパク質を発現しているNSCも腫瘍を形成した。このように、ジンクフィンガードメインを有するC11orf95と他の転写制御因子の融合は、腫瘍形成を促進するようである。

N. R. Gough, Brain Tumor by NF-κB Fusion. Sci. Signal. 7, ec61 (2014).

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2014年3月4日号

Editor's Choice

がん
NF-κBの融合による脳腫瘍

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