神経科学
GlyRに火がつく

Neuroscience
GlyR Gets Inflamed

Editor's Choice

Sci. Signal., 10 June 2014
Vol. 7, Issue 329, p. ec153
[DOI: 10.1126/scisignal.2005578]

Jason D. Berndt

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. M. Chirila, T. E. Brown, R. A. Bishop, N. W. Bellono, F. G. Pucci, J. A. Kauer, Long-term potentiation of glycinergic synapses triggered by interleukin 1β. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, 8263–8268 (2014). [Abstract] [Full Text]

ニューロン間のシナプス伝達の長期増強(LTP)は、細胞記憶の一種である。LTPは、興奮性神経伝達物質グルタミン酸、または一般的に抑制性の神経伝達物質GABA(γ-アミノ酪酸)が関与するシナプスで発生する可能性がある。グリシンはもう一つの抑制性神経伝達物質であり、GABA受容体と構造的に関連するリガンド作動性塩素イオンチャネル(GlyR)を活性化させる。グリシン作動性シナプスは脊髄後角のニューロンに存在し、ニューロン伝達がグリシンまたはGABAを介して抑制されると、疼痛知覚が変化する可能性があるが、疼痛知覚は炎症によっても増強される。Chirilaらは、炎症性サイトカインであるインターロイキン1β(IL-1β)が、グリシン作動性シナプスでLTPを促進することを見出した。マウス脊髄の培養スライスをIL-1βに短時間曝露すると、グリシン作動性入力を受けたニューロンからの、電気的に誘起される抑制性シナプス後電流が増強されたが、グルタミン酸作動性またはGABA作動性入力を受けたニューロンではそのような増強は認められなかった。グリシン作動性シナプスのIL-1βによる増強は、記録時間中(約30分間)持続し、IL-1受容体拮抗薬を同時に投与することによって抑制されたが、後から投与した場合は抑制されなかった。IL-1β曝露によって、グリシン投与により誘起される電流と、自発微小抑制性シナプス後電流の振幅の両方が増強されたことから、IL-1βは、シナプス後ニューロンの性質を調節することによって、LTPを引き起こすことが示唆された。IL-1βを介するグリシン作動性LTPは、細胞内カルシウムの枯渇によって、または、IL-1受容体の下流で作用するキナーゼp38の阻害によって、抑制された。炎症はグリア細胞のプリン受容体の活性化を誘導し、IL-1βを分泌させる。これと一致して、スライス培養物をプリン受容体作動薬に曝露すると、グリシン作動性シナプスがIL-1β依存的に増強された。マウスの後足にホルマリンを注入して炎症を誘発すると、痛覚過敏と異痛が引き起こされ、これらのマウスから得た脊髄スライス培養物のニューロンでは、IL-1β曝露によってグリシン作動性LTPは誘導されなかった。このように、炎症はニューロンのグリシン作動性LTPを誘発できるIL-1β分泌を誘導し、疼痛を促進する。

 

J. D. Berndt, GlyR Gets Inflamed. Sci. Signal. 7, ec153 (2014).

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2014年6月10日号

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