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神経科学
日焼け中毒
Neuroscience
The Sunny Side of Addiction
Sci. Signal., 1 July 2014
Vol. 7, Issue 332, p. ec178
[DOI: 10.1126/scisignal.2005640]
Jason D. Berndt
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
G. L. Fell, K. C. Robinson, J. Mao, C. J. Woolf, D. E. Fisher. Skin β-endorphin mediates addiction to UV light. Cell 157, 1527-1534 (2014). [PubMed]
H. A. Tejeda, A. Bonci, Shedding "UV" light on endogenous opioid dependence. Cell 157, 1500-1501 (2014). [PubMed]
皮膚がんなどの悪影響が考えられるにもかかわらず、ヒトは太陽光を浴びたがる。紫外線(UV)への曝露はケラチノサイトのDNA損傷を誘導し、p53依存性のプロオピオメラノコルチン(POMC)転写を活性化する。このPOMCの翻訳および切断により、色素誘導性ホルモンα-MSHと内因性オピオイドβ-エンドルフィンを含むペプチドが産生される。Fellらは、皮膚由来のβ-エンドルフィンがUV中毒を引き起こすことを見いだした。背部を刈毛したマウスに中等量のUVを1日1回照射したところ、循環血中のβ-エンドルフィン濃度が上昇し、それにより筋収縮が生じ、機械刺激および熱刺激に対する疼痛閾値が上昇したが、これは全身性にμ型オピオイド受容体を活性化したときと一致する所見であった。UV曝露の中止、またはオピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンの急性投与により、このような作用は回復した。UV曝露マウスに対する急性ナロキソン投与は、オピオイド依存性マウスで認められるものと同様の離脱症状を引き起こした。UV曝露は、外因性オピオイドであるモルヒネの疼痛緩和作用に対する交差耐性を誘導した。ケラチノサイト特異的にp53コード遺伝子(TP53)を欠損させたマウスにおいて、UV曝露は循環血中のβ-エンドルフィン量を増加させなかった。さらに、ケラチノサイト特異的なTP53欠損、またはPOMC遺伝子のβ-エンドルフィンコード領域の全身での欠損は、UV誘発性の疼痛閾値の上昇を抑制し、オピオイド依存症の行動の発現を抑制した。このように、日光、またはUV日焼けベッドの人工光への曝露は、正の強化と嗜癖行動を伴う中枢神経系応答を引き起こす、皮膚細胞からのβ-エンドルフィン放出を誘導する(Tejeda and Bonciの論文参照)。
J. D. Berndt, The Sunny Side of Addiction. Sci. Signal. 7, ec178 (2014).