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骨髄間葉系幹細胞由来のエキソソームには転移性乳がん細胞の休眠を促進するマイクロRNAが含まれている

Exosomes from bone marrow mesenchymal stem cells contain a microRNA that promotes dormancy in metastatic breast cancer cells

Research Article

Sci. Signal., 1 July 2014
Vol. 7, Issue 332, p. ra63
[DOI: 10.1126/scisignal.2005231]

Makiko Ono1, Nobuyoshi Kosaka1, Naoomi Tominaga1, Yusuke Yoshioka1, Fumitaka Takeshita1, Ryou-u Takahashi1, Masayuki Yoshida2, Hitoshi Tsuda3, Kenji Tamura4, and Takahiro Ochiya1*

1 Division of Molecular and Cellular Medicine, National Cancer Center Research Institute, Tokyo 104-0045, Japan.
2 Department of Pathology and Clinical Laboratories, National Cancer Center Hospital, Tokyo 104-0045, Japan.
3 Department of Pathology, National Defense Medical College, Saitama 359-0042, Japan.
4 Breast and Medical Oncology Division, National Cancer Center Hospital, Tokyo 104-0045, Japan.

* Corresponding author. E-mail: tochiya@ncc.go.jp

要約

乳がん患者においては、原発腫瘍の切除から何年も後に転移性病変が発生することが多い。播種性細胞は休眠したように見え、感知されないため、患者は無症状である。休眠細胞では増殖が減速するため、これらの細胞は、多くのがん細胞の速い細胞周期を利用する従来の化学療法に反応しない場合が多い。われわれは、蛍光標識MDA-MB-231細胞をマウスの骨髄に播種させ、それらを追跡し分離することによって、骨髄転移性ヒト乳がん細胞株(BM2)を作製した。BM2細胞を、ヒトドナーから分離した骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)と共培養したところ、BM-MSCがBM2細胞の増殖を抑制し、幹細胞様表面マーカーの存在量を減少させ、マトリゲル被覆トランスウェルを通した浸潤を阻害し、一般的な化学療法剤であるドセタキセルへの感受性を低下させることが明らかになった。BM2細胞におけるこのような休眠表現型の獲得は、BM-MSC培養上清で細胞を培養することによって、または、BM-MSC培養液から分離したエキソソームと細胞を培養してBM2細胞にとりこませることによっても観察された。成人線維芽細胞由来のエキソソームよりもBM-MSC由来のエキソソームにおいて増加している種々のマイクロRNA(miRNA)のうち、miR-23bをBM2細胞に過剰発現させると、その標的遺伝子である細胞周期進行と運動性を促進するタンパク質をコードするMARCKSが抑制されることによって、休眠表現型が誘導された。患者骨髄中の転移性乳がん細胞では、miR-23b発現が増加し、MARCKS発現が低下していた。これらの結果を総合すると、骨髄からのmiRNAのエキソソーム輸送によって、転移ニッチにおける乳がん細胞の休眠が促進される可能性が示唆される。

M. Ono, N. Kosaka, N. Tominaga, Y. Yoshioka, F. Takeshita, R.-u. Takahashi, M. Yoshida, H. Tsuda, K. Tamura, T. Ochiya, Exosomes from bone marrow mesenchymal stem cells contain a microRNA that promotes dormancy in metastatic breast cancer cells. Sci. Signal. 7, ra63 (2014).

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