• ホーム
  • 医学 レット症候群に対する併用治療

医学
レット症候群に対する併用治療

Medicine
Combined Treatment for Rett Syndrome

Editor's Choice

Sci. Signal., 15 July 2014
Vol. 7, Issue 334, p. ec190
[DOI: 10.1126/scisignal.2005683]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Castro, R. I. Garcia, S. Kwok, A. Banerjee, J. Petravicz, J. Woodson, N. Mellios, D. Tropea, M. Sur, Functional recovery with recombinant human IGF1 treatment in a mouse model of Rett syndrome. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, 9941–9946 (2014). [Abstract] [Full Text]

N. Mellios, J. Woodson, R. I. Garcia, B. Crawford, J. Sharma, S. D. Sheridan, S. J. Haggarty, M. Sur, β2-Adrenergic receptor agonist ameliorates phenotypes and corrects microRNA-mediated IGF1 deficits in a mouse model of Rett syndrome. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, 9947–9952 (2014). [Abstract] [Full Text]

X染色体に位置する遺伝子であるメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)の変異は、主に女性に発生する神経発達障害であるレット症候群の原因となる。MECP2は、脳由来神経栄養因子(BDNF)の存在量を制御するマイクロRNAの存在量の変化を含む、さまざまな機構を介して、遺伝子発現を調節する。インスリン様成長因子1(IGF1)は、脳と末梢で産生され、血液脳関門を通過することができるもう1つの成長因子である。レット症候群の治療におけるIGF1の安全性と有効性に関する臨床試験が、進行中である。CastroらとMelliosらの研究では、レット症候群のマウスモデルにおいて、組換えヒトIGF1(rhIGF1)とβ2-アドレナリン受容体作動薬クレンブテロールが、レット様症状の改善に有効であることが示された。Castroらは、雄Mecp2–/yマウスでは野生型マウスと比べて血中IGF1が低く、これらのMecp2–/yマウスに生後14日(P14)からrhIGF1を連日腹腔内注射すると、生存期間が延長し、呼吸パターンと心拍数が改善され、自発運動活性が上昇することを見出した。さらに、薬剤投与マウスでは、社会的行動が改善され、不安に関連する行動が減少した。シナプスと神経回路の成熟遅延は、レット症候群の症状に関与する可能性があり、雌Mecp2–/+マウスでは、眼球優位性可塑性の期間の延長が認められたが、これはrhIGF1投与により是正された。雄Mecp2–/yマウスにおいては、rhIGF1投与後に、視覚皮質のシナプス後棘突起の密度と、微小興奮性シナプス後電流も正常化した。

Melliosらは、レット症候群とMecp2欠損マウスに伴うアドレナリン作動性シグナル伝達の欠損が、治療標的となりうるかどうかを検討した。クレンブテロールは、β2-アドレナリン受容体特異的作動薬で、血液脳関門を通過し、BDNF産生を刺激する能力をもつ。雄Mecp2–/yマウスにP14から、5日間投与後に2日間休薬する方法で、クレンブテロールを腹腔内注射したところ、生存期間が延長し、呼吸機能、運動協調性、社会的行動が改善された。クレンブテロールを症状のある雌Mecp2–/+マウス(6〜12ヵ月齢)に投与した場合にも、呼吸機能、認知機能、運動協調性が改善されたことから、レット症候群の症状は、少なくとも部分的には改善される可能性のあることが示唆された。雄Mecp2–/yマウスにクレンブテロールとrhIGF1を併用投与すると、クレンブテロール単独投与の場合よりも、生存期間が大きく延長した。雄Mecp2–/yマウスの小脳の解析によって、Bdnf発現を刺激する転写因子である、活性化されたリン酸化CREB(pCREB)の減少が明らかになり、クレンブテロールを投与すると、小脳のpCREB量とBdnfおよびIgf1 mRNA量が増加した。BDNFの標的の1つは、let-7ファミリーのマイクロRNAの存在量を低下させるマイクロRNAプロセシングタンパク質LIN28Aである。Mecp2欠損マウスの小脳では、LIN28A存在量が低下しており、クレンブテロール投与によって、LIN28A存在量と、IGF1を標的とするlet-7fの存在量が正常化した。培養細胞株での過剰発現実験では、LIN28AがIGF1産生を増加させ、let-7fがIGF1産生を低下させることが示され、let-7fは、let-7fコンセンサス部位を含むIgf1の3'-非翻訳領域をもつレポーターの遺伝子発現を抑制しうることが確認された。したがって、レット症候群様の表現型を改善させるクレンブテロールの作用機序の1つは、CREBを活性化してBDNFを増加させ、LIN28A存在量を増加させることによって、マイクロRNA let-7fの存在量を低下させるとともに、IGF1産生を回復させることであると考えられる。

N. R. Gough, Combined Treatment for Rett Syndrome. Sci. Signal. 7, ec190 (2014).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2014年7月15日号

Editor's Choice

医学
レット症候群に対する併用治療

Research Article

E3リガーゼPARCはニューロンおよびがん細胞の生存を促すため細胞質チトクロームcの分解を媒介する

Research Resources

細胞表面ディスプレイ技術とRacの同時的活性化による細胞の急速な食細胞化

Perspectives

殺し屋を殺す:PARC/CUL9はチトクロムcの破壊により細胞の生存を促進する

Reviews

WNK-SPAK/OSR1経路:カチオン−塩素イオン共輸送体のマスター制御因子

最新のEditor's Choice記事

2018年5月1日号

小胞体ストレスががんを阻害するとき

2018年4月24日号

新たなつながり:ユーイング肉腫の「ドライバー」がそのアキレス腱である

2018年4月17日号

PD-1シグナル伝達を再検討する

2018年4月10日号

新たなつながり:単純なシグナル伝達系の複雑性

2018年4月3日号

新たなつながり:サイトカインは共有することを学ぶ