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細胞表面ディスプレイ技術とRacの同時的活性化による細胞の急速な食細胞化

Rapidly rendering cells phagocytic through a cell surface display technique and concurrent Rac activation

Research Resources

Sci. Signal., 15 July 2014
Vol. 7, Issue 334, p. rs4
[DOI: 10.1126/scisignal.2005123]

Hiroki Onuma1, Toru Komatsu1,2*, Makoto Arita1†, Kenjiro Hanaoka1, Tasuku Ueno1, Takuya Terai1, Tetsuo Nagano3, and Takanari Inoue2,4,5*

1 Graduate School of Pharmaceutical Sciences, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo, 113-0033 Japan.
2 Precursory Research for Embryonic Science and Technology Investigator, Japan Science and Technology Agency, 4-1-8 Honcho Kawaguchi, Saitama 332-0012, Japan.
3 Open Innovation Center for Drug Discovery, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan.
4 Department of Cell Biology, School of Medicine, Johns Hopkins University, 855 North Wolfe Street, Baltimore, MD 21205, USA.
5 Center for Cell Dynamics, School of Medicine, Johns Hopkins University, Baltimore, MD 21205, USA.

† Present address: RIKEN Center for Integrative Medical Sciences, 1-7-22 Suehiro-cho, Tsurumi-ku, Yokohama City, Kanagawa 230-0045, Japan.

* Corresponding author. E-mail: tkomatsu@mol.f.u-tokyo.ac.jp (T.K.); jctinoue@jhmi.edu (T.I.)

要約

細胞表面は、遊走、分裂、接着、食作用などの多様な細胞過程を決定する細胞外シグナルの伝達を媒介するプラットフォームである。そのため、生細胞の表面特性を迅速に再構成する技術は、こうした細胞機能を装備させる能力をもたらすはずである。食作用の分子機構は十分に特徴づけられているが、この精巧な過程を活性化するための十分条件となる最小限の分子プレイヤーはまだ把握されていない。われわれは、分単位で誘導可能な手法によって目的の分子を細胞表面に提示させる技術を開発し、実行した。乳脂肪球上皮増殖因子8(MFG-E8)のC2ドメインの細胞表面提示を誘導すると同時に、細胞内の低分子量グアノシントリホスファターゼRacを活性化させた。Racの活性化は、細胞末端でのアクチン重合を刺激する。C2ドメインは、アポトーシス細胞表面に露出しているホスファチジルセリンという脂質に結合する。これら2つの過程の刺激を統合することによって、われわれはHeLa細胞を、アポトーシス性ヒトJurkat細胞に結合して貪食する食細胞株へと転換させた。C2ドメインの細胞表面提示の誘導またはRacの活性化のいずれか一方のみでは食作用を刺激するには不十分であったことから、食作用の誘導に必要な最小限の分子イベントは標的細胞への付着とアクチンの再構築の組み合わせで構成されることが示唆されている。この細胞表面ディスプレイ技術は、特徴的な表面分子をもつ不要な細胞を遺伝子組み換え細胞によって迅速に消費させるという細胞ベースの標的療法の一環として有用かもしれない。

H. Onuma, T. Komatsu, M. Arita, K. Hanaoka, T. Ueno, T. Terai, T. Nagano, T. Inoue, Rapidly rendering cells phagocytic through a cell surface display technique and concurrent Rac activation. Sci. Signal. 7, rs4 (2014).

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