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血管生物学
極性化されたVEGFシグナル伝達出力

Vascular Biology
Polarized VEGF Signaling Outputs

Editor's Choice

Sci. Signal., 23 September 2014
Vol. 7, Issue 344, p. ec257
DOI: 10.1126/scisignal.2005933

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

N. Hudson, M. B. Powner, M. H. Sarker, T. Burgoyne, M. Campbell, Z. K. Ockrim, R. Martinelli, C. E. Futter, M. B. Grant, P. A. Fraser, D. T. Shima, J. Greenwood, P. Turowski, Differential apicobasal VEGF signaling at vascular blood-neural barriers. Dev. Cell 30, 541-552 (2014). [PubMed]

要約 栄養素を組織へ送達して廃棄物を組織から除去する微小血管内では、単層の内皮細胞が血液と実質を隔てている。この内皮バリアーは、極性をもつ細胞シートで構成されており、細胞の頂端膜側が血管腔(管腔側)に面し、基底側が実質(反管腔側)に面している。血管内皮増殖因子A(VEGF-A)は通常、血管透過性を亢進させる。ところがHudsonらは、VEGF-Aをマウスに静脈注射した場合には脳または眼の微小血管の透過性は亢進されないが、VEGF-Aを脳または眼に直接注射した場合には透過性が亢進されることを見出した。これは、VEGF-Aが神経微小血管の反管腔側に存在する場合にのみ透過性が亢進されることを示唆している。初代神経微小血管内皮細胞(MVEC)は、培養液中で細胞間結合、頂底極性、バリアー機能を保持する。ラット、マウス、ブタの網膜または脳から単離された神経MVECでは、VEGF-AはMVEC単層の基底側に投与された場合にのみ透過性を亢進させた。VEGF受容体1(VEGFR1)は主にラット脳MVECの頂端膜側に分布しているが、VEGFR2は主に基底側に分布している。無傷のマウス海馬微小血管でも同様にVEGFR1とVEGFR2の極性化した分布がみられる。対照的に、肺微小血管では両方の受容体が管腔側に豊富に存在する。培養脳MVECでは、VEGF-Aに誘発される透過性亢進がVEGFR2特異的阻害因子によって阻止された。キナーゼであるAktとp38は、内皮細胞内でVEGFシグナル伝達によって活性化される多くの下流シグナル伝達構成要素のうちの2つである。培養ラット脳MVECでは、基底側にVEGF-A処理をするとp38のリン酸化(活性化)が誘導されたが、頂端側の処理では誘導されなかった。対照的に、VEGF-A、またはVEGFR1特異的リガンドで頂端側を処理するとAktのリン酸化(活性化)が誘導されたが、基底側の処理では誘導されなかった。VEGFR2に選択的に働くリガンドで基底側と頂端側のいずれを処理した場合もAktのリン酸化は誘導されなかった。in vivoでは、VEGF-Aの静脈注射によって網膜ライセート中でAktのリン酸化が誘導されたが、網膜への直接注射(反管腔側への投与)では誘導されなかった。肺微小血管ではVEGF-Aの静脈注射によって、リン酸化されたp38の蓄積が誘導されたが、脊髄を覆う膜の微小血管では誘導されなかった。さらなる実験では、頂端側のVEGF-A処理によって培養ラット脳MVECはスタウロスポリンに誘発されるアポトーシスから保護されることが示された。これらの結果は、神経微小血管内皮の基底側のVEGF-AがVEGFR2を通じて血管透過性を亢進させるシグナルを送る一方で、頂端側のVEGF-AはVEGFR1を通じて細胞の生存を促進させるシグナルを送る、というモデルを示唆している。

A.-M. VanHook, Polarized VEGF Signaling Outputs. Sci. Signal. 7, ec257 (2014).

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Editor's Choice

血管生物学
極性化されたVEGFシグナル伝達出力

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