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生殖生物学
すべての精子がWntを必要とする

REPRODUCTIVE BIOLOGY
Every sperm needs Wnt

Editor's Choice

Sci. Signal. 01 Dec 2015:
Vol. 8, Issue 405, pp. ec356
DOI: 10.1126/scisignal.aad9456

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. Koch, S. P. Acebron, J. Herbst, G. Hatiboglu, C. Niehrs, Post-transcriptional Wnt signaling governs epididymal sperm maturation. Cell 163, 1225–1236 (2015). [PubMed]

E. M. De Robertis, D. Ploper, Sperm motility requires Wnt/GSK3 stabilization of proteins. Dev. Cell 35, 401–402 (2015). [Online Journal]

Wntシグナル伝達経路が活性化されると、転写因子β-カテニンやその他のタンパク質のGSK3介在性リン酸化が抑制され、これらのタンパク質のプロテアソーム分解が減弱する。β-カテニンの安定化により、標的遺伝子の転写活性化が生じる一方、その他のGSK3標的が安定化すると、非転写性のシグナル伝達事象が引き起こされることがあるため、Kochらは(De RobertisとPlopeも参照)、転写が活発ではない細胞である精子においてこれを検討した。Cyclin Y–like 1(Ccnyl1)は、精巣の生殖細胞において、Wnt受容体LRP6のリン酸化とそれによる活性化を促進し、Ccnyl1–/–マウスの精子には、構造および運動の欠損と、in vitroで卵母細胞を受精させる能力の低下が認められた。構造的欠損は精巣上体を通過するあいだに生じ、Ccnyl1–/–マウスでは精子の成熟が障害されていることが示唆された。野生型マウスの精巣上体の管腔液には、Wnt2bを有するエキソソームが含まれ、これを野生型マウスの精巣上体の全切片から採取した精子に与えると、LRP6の活性化リン酸化が誘導されたが、Ccnyl1–/–マウスの精子ではこの反応が低下した。Ccnyl1–/–マウスの精巣上体尾部(精巣上体の末端部分)から採取した精子において、野生型マウスの精子と比較して、さまざまなGSK3標的のユビキチン化が増加していたことから、著者らは、形態と運動に関与する特異的GSK3標的を評価した。トランスフェクトHEK細胞では、GSK3βが、精子において膜タンパク質を適切に局在化させるための拡散障壁の形成に必要なGTPaseである、セプチン4をリン酸化した。Ccnyl1–/–精子のセプチン4は、in vitroで高分子量構造を形成せず、膜タンパク質ベイシジンは、Ccnyl1–/–精子では限定的な局在を示さなかった。精子の運動に関与するさまざまなタンパク質を脱リン酸化することにより、PP1活性は精子を不動状態に保ち、GSK3は、PP1の抑制性サブユニットであるPPP1R2をリン酸化することによって、PP1活性を促進する。Ccnyl1–/–精子においてはPPP1R2リン酸化とPP1活性が増加しており、野生型またはCcnyl1ヘテロ接合マウスの精子の運動性は、Wnt3aまたはGSK3阻害剤の投与により上昇した。近位精巣上体にWntアンタゴニストDkk1を誘導的に過剰発現させたマウスの精子では、LRP6活性化の低下とPP1R2リン酸化の増加が認められ、対照マウスの精子よりも運動性が低かった。したがって、精巣上体を通過する精子におけるWntシグナル伝達の活性化が、精子の成熟と運動を促進する。

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