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神経科学
CSF-1が疼痛シグナルを送る

NEUROSCIENCE
CSF-1 delivers a painful signal

Editor's Choice

Sci. Signal. 12 Jan 2016:
Vol. 9, Issue 410, pp. ec6
DOI: 10.1126/scisignal.aaf2141

Sudhakaran Prabakaran

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Z. Guan, J. A. Kuhn, X. Wang, B. Colquitt, C. Solorzano, S. Vaman, A. K. Guan, Z. Evans-Reinsch, J. Braz, M. Devor, S. L. Abboud-Werner, L. L. Lanier, S. Lomvardas, A. I. Basbaum, Injured sensory neuron–derived CSF1 induces microglial proliferation and DAP12-dependent pain. Nat. Neurosci. 19, 94–101 (2016). [PubMed]

神経障害性疼痛は疼痛刺激に対する慢性過敏を特徴とする。神経損傷の後、脊髄後角のミクログリア細胞が活性化され増殖する。ミクログリアにおけるItgamCx3cr1BdnfおよびCtssを含む数種の遺伝子の発現が疼痛と関連しており、ミクログリアの生存はコロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)を通じたシグナル伝達に依存している。Guanらは、損傷した後根神経節(DRG)ニューロンがどのように疼痛刺激を伝達し、脊髄中のミクログリアを活性化するかを検討した。神経損傷後のDRGおよび脊髄の背側1/4について行ったRNA配列決定(RNA-seq)解析から、コロニー刺激因子1(CSF-1)をコードする遺伝子であるCsf1の発現が、損傷した側のDRGにおいて亢進し、さらに脊髄中のCsf1rの発現が亢進したことが示された。免疫染色検査から、損傷側のDRGニューロンでは、損傷した末梢で増加する蛋白質であるATF3とともに、CSF-1も存在していることが確認された。神経損傷後に結紮したDRGニューロンでは、結紮部位でCSF-1が蓄積していた。このことは、CSF-1が損傷した軸索に沿って輸送され、脊髄まで運ばれることを示唆していた。Csf1欠損マウスにおいて疼痛過敏は軽減し、脊柱管へのCSF-1注射は疼痛過敏を回復させた。神経損傷およびCSF-1の脊髄注射は、脊髄中の単球に関連する遺伝子を誘導することなく、Itgam、Cx3cr1、BdnfおよびCtss(傷害に応答してミクログリア中で誘導される遺伝子)の発現を亢進した。神経損傷はまた、免疫膜アダプタータンパク質DAP12をコードするTyrobp遺伝子の発現も刺激した。増殖中の細胞を特定するBrdU標識と、CSF-1R陽性細胞を同定するための免疫蛍光解析を組み合わせることにより、神経損傷またはCSF1の脊髄注射後にこれらの細胞が増殖することが明らかにされ、これはミクログリアが増殖することを示していた。損傷またはCSF1脊髄注射後のTyrobp–/–マウスにおいてミクログリアの増殖が生じていたものの、これらのマウスは疼痛過敏を発現せず、神経損傷後またはCSF-1脊髄注射後にItgamCx3cr1BdnfおよびCtss遺伝子の発現は亢進しなかった。このことは、ミクログリアの増殖にDAP12は不要だが、ミクログリア細胞の活性化と過敏反応への関与にはDAP12が必要であることを示唆していた。本研究から、ミクログリアの痛覚発生機能はミクログリアの増殖とは独立して誘導されることが明らかとなった。このことは、これらの細胞の修復および損傷クリアランス機能を妨げることなく、痛覚機能を遮断するための介入が可能であるだろうことを示唆している。

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神経科学
CSF-1が疼痛シグナルを送る

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