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がんの代謝
GTPセンサーは脂質キナーゼである

CANCER METABOLISM
GTP sensor is a lipid kinase

Editor's Choice

Sci. Signal. 26 Jan 2016:
Vol. 9, Issue 412, pp. ec15
DOI: 10.1126/scisignal.aaf3049

Sudhakaran Prabakaran

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. Sumita, Y.-H. Lo, K. Takeuchi, M. Senda, S. Kofuji, Y. Ikeda, J. Terakawa, M. Sasaki, H. Yoshino, N. Majd, Y. Zheng, E. R. Kahoud, T. Yokota, B. M. Emerling, J. M. Asara, T. Ishida, J. W. Locasale, T. Daikoku, D. Anastasiou, T. Senda, A. T. Sasaki, The lipid kinase PI5P4Kβ is an intracellular GTP sensor for metabolism and tumorigenesis. Mol. Cell. 61, 187–198 (2016). [PubMed]

アデノシン三リン酸(ATP)やグアノシン三リン酸(GTP)などの、細胞においてエネルギーを貯蔵し伝達する生体分子の濃度の変化は、細胞恒常性に影響を及ぼし、病的状態を引き起こす可能性がある。たとえば、タンパク質合成においては、アミノ酸がポリペプチド鎖に組み込まれるごとに、2分子のGTPが使用されるため、がん細胞のような、活性があり急速に増殖している細胞は、多量のGTPを必要とする。Sumitaらは、GTP結合アガロースビーズに結合した細胞可溶化物のタンパク質の質量分析を行い、ホスファチジルイノシトール5-リン酸4-キナーゼβ(PI5P4Kβ)が、GTP結合パートナーであることを突き止めた。核磁気共鳴分光法によって、組換えPI5P4KβのGTPとの結合が確認され、in vitro解析では、PI5P4KβがGTPを加水分解することが示された。in vitroキナーゼアッセイでは、PI5P4KβがGTPをリン酸供与体として用いて、その基質であるホスファチジルイノシトール5-リン酸[PI(5)P]をリン酸化することが明らかになった。さらに、PI5P4Kの他のアイソフォームは、GTPに対するKMが低く、したがって、この代謝物のすべての生理的濃度で完全に活性化されたことと比較して、PI5P4KβはGTPに対するKMが高いために、キナーゼ活性がGTP濃度の生理的変化に応じて変動した。PI5P4Kβの結晶構造解析では、Thr201とPhe205が、GTP結合にきわめて重要な残基として同定された。PI5P4KβF205L変異タンパク質には、野生型と比べて、GTPの加水分解とキナーゼ活性の両方の低下が認められた。野生型PI5P4Kβを過剰発現するマウス胚線維芽細胞(MEF)において、GTP合成を阻害すると、PI(5)P濃度が上昇した一方、PI5P4KβF205Lを過剰発現したMEFでは、PI(5)P量に変化がなかった。がん細胞に起こる栄養枯渇を模倣するために軟寒天で培養した、PI5P4KβF205Lを発現するMEFでは、PI5P4Kβを発現するMEFと比べて、形成されるコロニーが有意に少なかった。免疫不全マウスに、PI5P4Kβを発現するMEFを皮下注射すると、腫瘍が発生した一方、PI5P4KβF205Lを発現するMEFを注射した場合には、腫瘍の発生は認められなかった。したがってこの研究からは、PI5P4KβがGTP濃度を感知し、PI(5)Pがこの応答におけるセカンドメッセンジャーとして機能すると考えられ、これが、がんを可能にする主要な代謝調節事象として働く可能性があることが示唆された。

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2016年1月26日号

Editor's Choice

がんの代謝
GTPセンサーは脂質キナーゼである

Research Article

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