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免疫反応においてミトコンドリアが担うさらなる役割
More roles for mitochondria in the immune response
Sci. Signal. 13 Sep 2016:
Vol. 9, Issue 445, pp. ec208
DOI: 10.1126/scisignal.aai9319
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
J. Garaude, R. Acín-Pérez, S. Martínez-Cano, M. Enamorado, M. Ugolini, E. Nistal-Villán, S. Hervás-Stubbs, P. Pelegrín, L. E. Sander, J. A. Enríquez, D. Sancho, Mitochondrial respiratory-chain adaptations in macrophages contribute to antibacterial host defense.Nat. Immunol. 17, 1037-1045 (2016). [PubMed]
M. A. Holmbeck, G. S. Shadel, Mitochondria provide a 'complex' solution to a bacterial problem. Nat. Immunol. 17, 1009-1010 (2016). [PubMed]
要約
ミトコンドリアは、エネルギーを産生する細胞内小器官であるだけでなく、細胞死や活性酸素種(ROS)産生に関与し、自然免疫反応のプラットフォームとしても機能する。効率的なATP産生には、ミトコンドリア内膜に存在する一連の多タンパク質複合体(I〜V)からなる電子伝達系(ETC)を通る電子流が必要である。マクロファージは、免疫反応において最初に応答する細胞の1つである(Holmbeck and Shadel参照)。これらの細胞は、Toll様受容体(TLR)やインフラマソームとして知られる多タンパク質複合体など、多くのパターン認識受容体を介して病原体由来の分子を検知し、炎症性サイトカインを産生する。また、細菌を貪食し死滅させる。Garaudeらは、マクロファージが生菌を貪食するとETCにおける複合体Iの会合が不安定化して複合体Iの活性は減少するが、複合体IIの活性は増加することを見出した。これらの変化は、ファゴソーム(食胞)のNADPHオキシダーゼ(NOX)に媒介されるROS産生とチロシンキナーゼFgrに依存した。死菌の貪食では、複合体IIの活性は増加しなかったが、マクロファージを細菌性RNAに曝露させると、TLRとインフラマソームシグナル伝達を必要とする過程を介して複合体II活性が亢進された。複合体IIのサブユニットの1つは、代謝産物コハク酸からフマル酸への変換を触媒するコハク酸脱水素酵素(SDH)である。マクロファージのSDHを阻害薬NPAで阻害すると、大腸菌による細胞感染に応答する複合体IIの活性は減少した。NPA処理後にネズミチフス菌を感染させたマウスは、溶媒のみで処理した対照マウスよりも死亡数が多く、血清中の炎症性サイトカイン量が減少していた。NPA処理後に大腸菌を感染させたマウスでも、炎症性サイトカイン産生に同様の減少がみられた。まとめると、これらのデータは、マクロファージが生菌を検知するとETCの複合体活性がリモデリングされて変化し、至適な炎症反応にはこのような変化が必要であることを示している。