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分解のためのリン酸化アルギニン

Phosphoarginine for degradation

Editors' Choice

Sci. Signal. 08 Nov 2016:
Vol. 9, Issue 453, pp. ec260
DOI: 10.1126/scisignal.aal3406

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. B. Trentini, M. J. Suskiewicz, A. Heuck, R. Kurzbauer, L. Deszcz, K. Mechtler, T. Clausen,Arginine phosphorylation marks proteins for degradation by a Clp protease. Nature 539, 48-53 (2016). [PubMed]

A. Tripathi, S. Gottesman, Phosphate on, rubbish out. Nature 539, 38-39 (2016). [Online Journal]

要約

修復不可能にまでダメージを受けた細菌性タンパク質は、ポリペプチドタグの共有結合、またはプロテアーゼにより認識されるアダプタータンパク質の結合により、degronと呼ばれるアミノ酸モチーフを露出させるコンフォメーション変化をすることで、タンパク分解性破壊の標的になりえる。ClpCPプロテアーゼ複合体において、ClpCは基質をアンフォールドし、プロテアーゼClpPの活性部位の中に送り込む。アダプタータンパク質MecAは、ClpCへの基質の結合を媒介する。Trentini らは、アルギニンリン酸化もMecA非依存的に、細菌性タンパク質をClpCPによる分解のための標的とすることを見いだした。不活性型の細胞プロテアーゼ複合体ClpCPを発現している枯草菌 (Bacillus subtilis)に熱ショックを与えたとき、プロテアーゼ複合体のバレル構造内にトラップされていた基質の多くが、アルギニン残基のリン酸化を受けた。In vitroにおいて、アンフォールドしたβ-カゼインがClpCPを介して分解されるためには、アルギニンキナーゼMcsBの活性もしくはアダプターMecAの存在を必要とした。遊離リン酸アルギニンは、MecAの存在下または非存在下でClpCPを介したβ-カゼイン分解を抑制したが、遊離リン酸または非リン酸化アルギニンは抑制しなかった。このことは、リン酸化アルギニンがMecAと競合してClpCPと結合することを示唆していた。実際、結晶解析から、遊離リン酸化アルギニンは、MecAの結合部位と重複した部位でClpCに結合していることが示された。このことは、基質が、リン酸化アルギニンまたはアダプターを介したClpCとの結合により、ClpCPの標的になりえることを示している。リン酸化アルギニンとの結合に重要なClpC中の残基は、病原菌を含む他数種のグラム陽性菌で保存されていた。またこれらの残基を変異させると、 B. subtilis の熱ショックからの回復能が低下した。熱ショックがアルギニンのリン酸化をどのように刺激するかは明らかにならなかったが、これらの所見から、B. subtilisにおいて分解のためにタンパク質を標的化する一般的機構としてアルギニンのリン酸化が特定され、また、このプロセスが、新規の抗菌薬開発のための標的候補になりえることが示唆された(Tripathi and Gottesman参照)。

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2016年11月8日号

Editors' Choice

分解のためのリン酸化アルギニン

Research Article

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