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ノルエピネフリン異化による脂肪増加
Fat expansion through norepinephrine catabolism
Sci. Signal. 14 Nov 2017:
Vol. 10, Issue 505, eaar4569
DOI: 10.1126/scisignal.aar4569
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
C. D. Camell, J. Sander, O. Spadaro, A. Lee, K. Y. Nguyen, A. Wing, E. L. Goldberg, Y.-H. Youm, C. W. Brown, J.Elsworth, M. S. Rodeheffer, J. L. Schultze, V. D. Dixit, Inflammasome-driven catecholamine catabolism in macrophages blunts lipolysis during ageing. Nature 550, 119-123 (2017).
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R. M. Pirzgalska, E. Seixas, J. S. Seidman, V. M. Link, N. M. Sánchez, I. Mahú, R. Mendes, V. Gres, N. Kubasova,I. Morris, B. A. Arús, C. M. Larabee, M. Vasques, F. Tortosa, A. L. Sousa, S. Anandan, E. Tranfield, M. K. Hahn,M. Iannacone, N. J. Spann, C. K. Glass, A. I. Domingos, Sympathetic neuron-associated macrophages contribute to obesity by importing and metabolizing norepinephrine. Nat. Med. 23, 1309-1318 (2017).
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M. P. Czech, Macrophages dispose of catecholamines in adipose tissue. Nat. Med. 23, 1255-1257 (2017).
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ある特定のマクロファージ集団が老化または肥満に応答して脂肪組織内のノルエピネフリン誘導性脂肪分解を制限する。
要約
空腹または寒冷曝露は、脂肪組織を神経支配する交感神経細胞からのノルエピネフリン(カテコラミンの一種)の放出を引き起こす。ノルエピネフリンは、トリグリセリドの脂肪分解を促進し、この過程は、白色脂肪組織塊および体脂肪蓄積全体を減少させ、褐色脂肪組織による熱産生を可能にする。高齢者の脂肪細胞では、脂肪組織マクロファージ(ATM)によるノルエピネフリン分解が原因で空腹に誘導される脂肪分解が損なわれていることが、Camellら(Czechも参照)によって明らかにされた。老化によって、ATMではモノアミン酸化酵素A(MAOA)などのノルエピネフリン分解酵素をコードする遺伝子の発現量が増加した。この作用は、NLRP3インフラマソームと、トランスフォーミング増殖因子ファミリーに属するGDF-3(増殖分化因子3)に依存した。高齢マウスをMAOAインヒビターで処理すると、脂肪組織のノルエピネフリン濃度が上昇し、空腹に誘導される脂肪分解が回復した。もうひとつの論文では、Pirzgalskaらによって、ATMとは異なる(そしてCamellらによっても同定された)交感神経細胞に関連するマクロファージ集団の特徴づけがなされた。著者らがSAM(sympathetic neuron-associated macrophage、交感神経細胞関連マクロファージ)と呼ぶこれらのマクロファージは、トランスポーターSLC6A2を介してノルエピネフリンを取り込み、MAOAによって異化する。マウスの食餌性または遺伝性肥満ではSAMの数が増加し、SAMは交感神経線維で炎症性サイトカインをコードする遺伝子を発現した。造血性細胞系統の細胞では、Slc6a2発現はSAMに特異的であり、Slc6a2-/-骨髄細胞を注入されたob/obマウスでは、対照骨髄細胞を注入されたob/obマウスと比べて、血中のノルエピネフリン濃度が高く、体重が軽かった。免疫組織化学的検査では、SLC6A2陽性かつMAOA陽性のマクロファージがヒト交感神経節に存在することが示された。このように、ある特定のマクロファージ集団は、老化または肥満に応答して、ノルエピネフリンの吸い込み口として機能することによって脂肪組織における脂肪分解を制限している。