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新たなつながり:がんに対して免疫記憶を刺激する

New connections: Stimulating immune memory against cancer

Editor's Choice

Sci. Signal. 02 Jan 2018:
Vol. 11, Issue 511, eaar8122
DOI: 10.1126/scisignal.aar8122

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Y. Nie, J. He, H. Shirota, A. L. Trivett, D. Yang, D. M. Klinman, J. J. Oppenheim, X. Chen, Blockade of TNFR2 signaling enhances the immunotherapeutic effect of CpG ODN in a mouse model of colon cancer. Sci. Signal. 11, eaan0790(2018).
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E. S. Vanamee, D. L. Faustman, Structural principles of tumor necrosis factor superfamily signaling. Sci. Signal. 11,eaao4910 (2018).
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M. Gumbleton, R. Sudan, S. Fernandes, R. W. Engelman, C. M. Russo, J. D. Chisholm, W. G. Kerr, Dual enhancement of T and NK cell function by pulsatile inhibition of SHIP1 improves antitumor immunity and survival. Sci. Signal. 10,eaam5353 (2017).
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将来の免疫療法は、患者のがん再発予防のために、免疫系による攻撃だけでなく免疫記憶をも刺激する。

要約

がん免疫療法は、患者の免疫系を刺激して腫瘍細胞を攻撃させる。成功の見込みはあるものの、これまでのところ、その成功は限られている。免疫系を構成する数多くの細胞種についても、それら免疫細胞種と腫瘍との間や免疫細胞種間の相互作用の仕方(たとえば、より有効な免疫療法につながる可能性があるような免疫賦活薬に対して制御T細胞(Treg)がどのような反作用を示すか)についても、われわれは理解し始めたばかりである。しかし、原発性腫瘍にとどまらず、がん再発(腫瘍の再増殖)はがん患者にとって治療後も長くつきまとう懸念である。動物モデルを用いた2件の研究で、がんに対する免疫系の攻撃だけでなく免疫記憶をも刺激する戦略が明らかにされ、患者のがん再発を防止するための戦略に発展する可能性が示されている。

Science Signalingの今週号でNieらは、一般的な単剤免疫療法に反応しないマウスに対して、同時に腫瘍壊死因子(TNF)の受容体を抑制すると、Tregの活性化が抑制され、結腸腫瘍と乳腺腫瘍が縮小することを示した。さらに、そうして腫瘍のなくなったマウスは、同じがん細胞による再誘発に抵抗性を示した。これらの知見は、抗TNF治療法を追加することによって免疫療法の有効性が改善される可能性を示唆している(Vanamee、FaustmanによるReviewも参照)。ArchivesではGumbletonらが、現在の免疫療法に多くみられる落とし穴である免疫細胞の消耗を予防するとともに抗腫瘍免疫記憶を確立する方法を明らかにした。ホスファターゼSHIP1を抑制するパルス療法によって、重要な免疫細胞集団の抗腫瘍活性が永続的に促進され、リンパ腫と結腸がんを有するマウスの生存率が高まるだけでなく、腫瘍細胞に対する免疫記憶が誘導されることを見出したのだ。動物モデルに対する警告を別にすれば、これらの報告は、免疫療法の有効性と有効範囲を改善しうる重要な治療戦略の可能性を明らかにし、がん患者における無再発転帰への期待を高めるものである。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

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2018年1月2日号

Editor's Choice

新たなつながり:がんに対して免疫記憶を刺激する

Research Article

大腸がんマウスモデルにおいてTNFR2シグナル伝達の遮断はCpG ODNの免疫治療効果を高める

脱パルミトイル化酵素APT1は細胞分裂時のNotchおよびWntシグナル伝達の非対称な分配を指示する

小胞体シャペロンBiPは短命で、N末端アルギニル化を介して代謝される

Reviews

腫瘍壊死因子スーパーファミリーシグナル伝達の構造原則

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