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脂質生合成に必要なイントロンのスプライシング
Intron splicing for lipid biosynthesis
Sci. Signal. 23 Jan 2018:
Vol. 11, Issue 514, eaat0486
DOI: 10.1126/scisignal.aat0486
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
G. Lee, Y. Zheng, S. Cho, C. Jang, C. England, J. M. Dempsey, Y. Yu, X. Liu, L. He, P. M. Cavaliere, A. Chavez, E. Zhang,M. Isik, A. Couvillon, N. E. Dephoure, T. K. Blackwell, J. J. Yu, J. D. Rabinowitz, L. C. Cantley, J. Blenis, Post-transcriptional regulation of de novo lipogenesis by mTORC1-S6K1-SRPK2 signaling. Cell 171, 1545-1558.e18(2017).
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mTORC1は、脂質生合成酵素をコードする転写産物からのイントロンのスプライシングを促進することによって新規脂質生合成を調節する。
要約
多タンパク質複合体mTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1、ラパマイシン機構的標的複合体1)は、環境キュー(合図)を細胞の成長および増殖と共役させる。Leeらは、mTORC1が、増殖中の細胞の細胞膜拡大に必要となる脂肪酸とコレステロールを生成する生合成過程である新規脂質生合成を調節することを見出した。mTORC1を活性化させると、SRファミリーに属するRNA結合タンパク質(ファミリー名はセリン/アルギニン[SR]反復ドメインに由来)をリン酸化するキナーゼファミリーのメンバーであるSRPK2のリン酸化が引き起こされる。SRPK2のリン酸化には複数のキナーゼが関与し、リン酸化されたSRPK2は核内へ再局在化する。mTORC1を薬理学的に阻害する、またはSRPK2をノックダウンさせると、遺伝子の共通サブセット(その多くは新規脂質生合成に関与する酵素をコードする遺伝子)の発現およびエクソン/イントロン使用に影響した。しかし、これらの遺伝子を標的とするプロモータの活性や転写因子の活性化には影響しなかったことから、転写後調節であることが示唆される。SRタンパク質SRSF1のSRPK2媒介リン酸化によって、SRSF1とスプライソソームの構成要素U1-70kとの相互作用が促進されるが、mTORC1を阻害すると、SRSF1とU1-70kの会合が減少した。mTORC1阻害薬で処置した細胞またはSRPK2欠損細胞では、脂質生合成酵素をコードするpre-mRNA(mRNA前駆体)がSRSF1と会合し、高いイントロン保持率を示した。この効果は、イントロンのスプライシングが不十分であることを示しており、これがナンセンス変異による崩壊の引き金になった。SRPK2の遺伝子欠損または薬理学的阻害は、異種移植された、mTORC1活性の高いがん細胞の増殖を抑制した。このように、エフェクターSRPK2を介した、mTORC1による新規脂質生合成の調節は、増殖中の細胞の成長に不可欠であり、腫瘍の増殖にも寄与している可能性がある。