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シスプラチンによる合成致死

Synthetic lethality with cisplatin

Editor's Choice

Sci. Signal. 21 Aug 2018:
Vol. 11, Issue 544, eaav1294
DOI: 10.1126/scisignal.aav1294

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. Jin, J. Chun, C. Pan, D. Li, R. Lin, G. N. Alesi, X. Wang, H.-B. Kang, L. Song, D. Wang, G. Zhang, J. Fan, T. J.Boggon, L. Zhou, J. Kowalski, C.-K. Qu, C. E. Steuer, G. Z. Chen, N. F. Saba, L. H. Boise, T. K. Owonikoko, F. R.Khuri, K. R. Magliocca, D. M. Shin, S. Lonial, S. Kang, MAST1 drives cisplatin resistance in human cancers by rewiring cRaf-independent MEK activation. Cancer Cell 34, 315-330.e7 (2018). Google Scholar

レスタウルチニブによるキナーゼMAST1の阻害が、Raf-MEKシグナル伝達により誘導されるがんのシスプラチン耐性を抑制する

要約

シスプラチンなど白金を含む化学療法薬は多数のがん種の治療に用いられているが、耐性が高頻度に発現し、その多くはキナーゼMEKの活性を介する。シスプラチンとその類似薬は通常、DNA鎖内に架橋を形成することで機能している。しかしJinらは、多様ながん細胞株を用いたスクリーニングおよび生化学的アッセイを通して、シスプラチンは他種の白金を含む化学療法薬と異なり、MEKに直接的にも結合し、そのキナーゼであるcRafとの相互作用を阻害していることを見出した。ただし、従来知られていなかったMEKとそのキナーゼであるMAST1との相互作用を、シスプラチンが阻害することにはなった。MAST1はその後、cRafが存在しない状態でもMEKをリン酸化して再活性化し、シスプラチンに対する耐性を可能にした。培養細胞および患者由来の異種移植モデルにおいて、シスプラチン処理後のMEKの再活性化は、レスタウルチニブ(MAST1も阻害するようであるマルチキナーゼ阻害薬)の同時添加によって阻害され、したがってMEKのリン酸化も阻害された。多数の患者の腫瘍検体において、MAST1の存在量はシスプラチン耐性と関連していた。膵がんおよび前立腺がん患者を対象としたレスタウルチニブ臨床試験の結果は様々であるものの、本剤は白血病治療に関してFDAから承認を受けている。今回得られたMAST1、Raf-MEKのシグナル伝達およびシスプラチンが関与する本剤の作用の新たな知識を利用して患者を選択することで、固形がんに関してより良い成果が得られると考えられる。これらの所見は、シスプラチン耐性を克服するという見通しが得られたという点で、またRaf-MEK経路(いずれも一般的ながんドライバーであり、かつ治療抵抗性の経路である)に関するわれわれの理解を広げるという点で刺激的である。

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2018年8月21日号

Editor's Choice

シスプラチンによる合成致死

Research Article

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