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グルココルチコイドとPD-1
Glucocorticoids and PD-1
Sci. Signal. 04 Sep 2018:
Vol. 11, Issue 546, eaav2683
DOI: 10.1126/scisignal.aav2683
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
L. Quatrini, E. Wieduwild, B. Escaliere, J. Filtjens, L. Chasson, C. Laprie, E. Vivier, S. Ugolini, Endogenous glucocorticoids control host resistance to viral infection through the tissue-specific regulation of PD-1 expression on NK cells. Nat. Immunol. 19, 954-962 (2018).
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C. A. Biron, Glucocorticoids and NK cell PD-1. Nat. Immunol. 19, 908-910 (2018).
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NK細胞のグルココルチコイド受容体によるシグナル伝達は、チェックポイント阻害剤PD-1の発現を誘導して、免疫病変を予防する。
要約
視床下部‐下垂体‐副腎(HPA)系が活性化すると、コルチゾールなどのグルココルチコイドの合成と、副腎皮質から血中への放出が促進される。続いてこれらの因子が、標的細胞の細胞質受容体を活性化し、標的遺伝子発現を誘導する。HPA系は、全身の炎症に反応して、またはウイルス感染時に活性化し、炎症の消散と恒常性の回復に必要とされる。グルココルチコイドが免疫応答を調節する機構をさらに解明するために、Quatrini らは、マウスにおいて主にナチュラルキラー(NK)細胞のグルココルチコイド受容体(GR)をノックアウトし、MCMVウイルスによる感染に対する影響を調べた。MCMV感染後、脾臓の野生型NK細胞では、内因性グルココルチコイドによって、チェックポイント阻害剤であるプログラム細胞死1(PD-1)の細胞表面存在量が増加したが、このような増加はGR欠損NK細胞や肝臓のNK細胞では認められなかった。in vitro試験により、脾臓に豊富に存在するサイトカインであるインターロイキン-15(IL-15)が、グルココルチコイドとともに作用してPD-1発現を誘導する一方、肝臓にIL-15よりも多く存在するIL-12は、この過程を阻害することが示された。NK細胞のPD-1細胞表面存在量の増加は、サイトカインであるインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生低下を伴ったが、ウイルス排除には影響を及ぼさなかったことから、GR欠損NK細胞と野生型NK細胞の細胞質(直接殺傷)機能は同様であることが示唆された。しかし、IFN-γ産生低下の結果として、脾臓の炎症と免疫病変が減少した。Bironが解説記事で論じているように、これらのデータから、HPA系は、NK細胞のPD-1を誘導することによって、ウイルス感染時のサイトカインを介する損傷を防ぐことが示唆される。