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機械的シグナル伝達機構の基礎
The basics of mechanotransduction
Sci. Signal. 13 Nov 2018:
Vol. 11, Issue 556, eaau2223
DOI: 10.1126/scisignal.aau2223
Erin R. Williams
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
K. N. Brazin, R. J. Mallis, A. Boeszoermenyi, Y. Feng, A. Yoshizawa, P. A. Reche, P. Kaur, K. Bi, R. E.Hussey, J. S. Duke-Cohan, L. Song, G. Wagner, H. Arthanari, M. J. Lang, E. L. Reinherz, The T cell antigen receptor α transmembrane domain coordinates triggering through regulation of bilayer immersion and CD3 subunit associations. Immunity 10.1016/j.immuni.2018.09.007 (2018).
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T細胞受容体α鎖の膜貫通ドメイン中の塩基性残基は、これとCD3シグナル伝達鎖との会合を促進している
要約
T細胞の機能に必要なT細胞受容体(TCR)は、TCRαおよびTCRβ抗原認識鎖と、CD3εγ、CD3εδおよびCD3ζζ二量体シグナル伝達鎖からなる複合体である。TCRαβ、CD3εγおよびCD3εδのヘテロ二量体化は細胞外ドメイン間の相互作用に依存し、一方で鎖間ジスルフィド結合はCD3ζζのホモ二量体化を促進する。しかし、CD3シグナル伝達鎖がどのようにTCRαβと会合するかは、正確には明らかになっていない。Brazinらはリン脂質ミセルの核磁気共鳴(NMR)分光法を用い、TCRαの膜貫通ドメインと細胞質側末端が、高度に動的なヒンジによって結合した2つのα-ヘリックスから構成される、L字型の構造を形成していることを見出した。またTCRαの膜貫通ヘリックス内では、保存されている塩基性残基Lys256が、TCR刺激性のCa2+流入およびサイトカインであるインターロイキン-2(IL-2)の産生に必要な、細胞膜への浅いTCRα挿入および、細胞表面にあるCD3εγおよびCD3ζζシグナル伝達鎖との会合を促進していることを明らかにした。TCRαとCD3δの会合は、TCRα細胞質側末端およびCD3δ内の、以前に確認されていたモチーフも必要としていた。L-2産生の測定および光ピンセットを用いた単一細胞剥離力測定により決定されたように、CD3シグナル伝達鎖との会合が低下しているすべてのTCRα変異体は、T細胞の活性化が低下していた。一方、CD3ζζとの会合に重要だがCD3εγとの会合には重要でない、TCRα膜貫通領域内のもう1つの塩基性残基であるR251Lの変異は、Ca2+流入の刺激に必要な力が低下させていた。これらのデータは、CD3シグナル伝達鎖はTCRα膜貫通ドメイン内の特定の塩基性残基と会合することを明らかにし、TCR複合体からのCD3ζζの解離はT細胞の活性化を促進する可能性を示唆している。CD3シグナル伝達鎖の解離はTCRの活性化後に生じ、非機能性の腫瘍浸潤T細胞において認められることから、CD3シグナル伝達鎖がどのようにTCRαと会合するかを理解することは、不活化に抵抗性をもつTCRベースの治療の設計に役立つ可能性がある。