- ホーム
- HER2がSTINGを弱める
HER2がSTINGを弱める
HER2 reduces the STING
Sci. Signal. 06 Aug 2019:
Vol. 12, Issue 593, eaay9834
DOI: 10.1126/scisignal.aay9834
Erin R. Williams
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
S. Wu, Q. Zhang, F. Zhang, F. Meng, S. Liu, R. Zhou, Q. Wu, X. Li, L. Shen, J. Huang, J. Qin, S. Ouyang, Z. Xia, H.Song, X.-H. Feng, J. Zou, P. Xu, HER2 recruits AKT1 to disrupt STING signalling and suppress antiviral defence and antitumour immunity. Nat. Cell Biol. 21, 1027-1040 (2019).
Google Scholar
I. D. Odell, R. A. Flavell, HER2 joins AKT to inhibit STING immunity. Nat. Cell Biol. 21, 917-918 (2019).
Google Scholar
受容体チロシンキナーゼHER2は、STING活性化を阻害し、DNAウイルス感染やがんに対する免疫応答を抑制する。
要約
DNA損傷または病原体の侵入が起こると、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)が、下流のインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)依存性シグナル伝達および免疫を刺激することによって、細胞内DNA認識が促進されると考えられる。このcGAS-STING経路の活性化は厳密に制御されており、その調節不全は自己免疫疾患の発症に関連している。STING活性化に役割を果たす可能性のあるキナーゼを同定するために、Wuらは、キナーゼのcDNAライブラリのスクリーニングを行い、受容体チロシンキナーゼHER2(別名ERBB2)の選択的発現によって、IRF3誘導型ルシフェラーゼレポーターのSTING依存性活性化が阻害されることを示した。HER2阻害とHER2欠損のいずれによっても、細胞株においてインターフェロン活性化遺伝子のSTING依存性活性化が促進された。大腸腺がん細胞ではHER2が内因性STINGと相互作用し、その細胞内ドメインの発現によって、STINGシグナロソーム形成の顕著な特徴である、STINGの下流キナーゼTBK1との相互作用と、アダプタータンパク質TNF受容体関連因子6(TRAF6)のK63ユビキチン化が阻害された。しかし、HER2そのものがSTINGシグナロソーム構成成分のリン酸化を促進したわけではなく、この活性はHER2依存性のAKT活性化と相関した。In vitroキナーゼアッセイによって、精製AKT1がTBK1リン酸化を刺激することが示され、質量分析により特異的標的部位が同定され、これは既知のAKT1基質モチーフと一致した。TBK1のこれらの残基をCRISPRで改変すると、TBK1およびIRF3の内因性活性化とSTINGを介する活性化の両方が増強された。In vitroおよびin vivoにおいて、HER2阻害剤により、DNAウイルスHSV-1の感染が制限された。一方、HER2を過剰発現させると、DNA損傷剤に対する細胞応答が低下し、恒常的STING活性化によりメラノーマ異種移植片の増殖が促進された。これらのデータから、これまで明らかにされていなかった、DNA感知が阻害される仕組みが同定されている(OdellとFlavellの解説記事参照)。重要な点として、この研究では、HER2または関連受容体であるEGFRに対する標的薬と、有効性のためにSTING活性を必要とするプログラム死リガンド1免疫療法との併用を検討する際には、注意を払うべき場合があることが示唆されている。