PIEZO1が炎症を促進する

PIEZO1 promotes inflammation

Editor's Choice

Sci. Signal. 10 Sep 2019:
Vol. 12, Issue 598, eaaz4154
DOI: 10.1126/scisignal.aaz4154

Erin R. Williams

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. G. Solis, P. Bielecki, H. R. Steach, L. Sharma, C. C. D. Harman, S. Yun, M. R. de Zoete, J. N. Warnock, S. D. F. To, A. G. York, M. Mack, M. A. Schwartz, C. S. Dela Cruz, N. W. Palm, R. Jackson, R. A. Flavell, Mechanosensation of cyclical force by PIEZO1 is essential for innate immunity. Nature 573, 69-74 (2019).
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S. R. Walmsley, Pressure regulates immune-cell function. Nature 573, 41-42 (2019).
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骨髄系細胞はイオンチャネルPIEZO1を介して機械力に応答し、これが炎症促進性応答を促進する。

要約

機械力は血管、上皮細胞およびニューロンの機能を変化させる。Solisらは、骨髄系免疫細胞も圧力感受性イオンチャネルPIEZO1を介して機械力を感知することを見出した(Walmsleyのcommentary参照)。静圧以外の圧力サイクルに曝露されたマクロファージにおいて、PIEZO1をコードする遺伝子の発現が亢進していた。PIEZO1の非存在下では、圧力サイクルに曝露されたマクロファージおよび単球は炎症性サイトカイン、炎症性ケモカインまたは転写因子低酸素誘導因子1α(HIF-1α)を発現していなかった。同様にマクロファージをカルシウム非含有培地中で周期的な圧力に曝露したり、または阻害剤によりPIEZO1活性を阻害したとき、HIF-1αの蓄積は阻止された。上清を移す古典的な実験から、圧力により刺激されたHIF-1αの安定化を低分子の分泌因子が促進すること、さらにマクロファージでは周期的な圧力に応答して、ホルモンであるエンドセリン-1(EDN1)がPIEZO1依存性に分泌されることが示された。マクロファージにおけるEDN1受容体またはキナーゼJNKの薬理学的阻害あるいは遺伝子破壊は、圧力により刺激されたHIF-1αの活性化を制限した。マウスでは、骨髄系細胞におけるPIEZO1の条件付き欠損が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染を増悪させ、これは肺胞洗浄液中の炎症性サイトカインおよびEDN1の量の減少、ならびに炎症性単球中のHIF-1α量の減少と関連していた。抗体を介した単球の枯渇は、感染後マウスの肺胞液中のEDN1および好中球動員性ケモカインCXCL12の存在量を低下させた。さらに、遺伝子組換えEDN1の鼻腔内投与は、PIEZO1欠損マウスにおける肺および肝臓への細菌の蓄積を回復させた。ブレオマイシン投与マウスにおける骨髄系細胞のPIEZO1欠損もEDN1の蓄積を減少させ、肺線維化を抑制した。まとめるとこれらのデータは、組織への侵入によって生じ、自然免疫パターンの認識とは独立して炎症促進性応答を誘導できる圧力および機械力の変化を、骨髄系細胞がどのように感知できるのかを明らかにしている。

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2019年9月10日号

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PIEZO1が炎症を促進する

Research Article

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