PAFとインフラマソーム

PAF and the inflammasome

Editor's Choice

Sci. Signal. 08 Oct 2019:
Vol. 12, Issue 602, eaaz7370
DOI: 10.1126/scisignal.aaz7370

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. Deng, H. Guo, J. W. Tam, B. M. Johnson, W. J. Brickey, J. S. New, A. Lenox, H. Shi, D. T. Golenbock, B. H. Koller, K. P. McKinnon, B. Beutler, J. P.-Y. Ting, Platelet-activating factor (PAF) mediates NLRP3-NEK7 inflammasome induction independently of PAFR. J. Exp. Med. 10.1084/jem.20190111 (2019).
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リン脂質PAFは、PAFのGPCRに依存せずにNLRP3インフラマソームの活性化と炎症性サイトカインの産生を促進する。

要約

血小板活性化因子(PAF)は、同族Gタンパク質共役受容体(GPCR)であるPAFR(PAFの誘導体であるlysoPAFにも結合する)と結合することによって血小板の凝集を促進するリン脂質である。しかし、PAFRは多くの細胞種にみられ、PAFは多様な炎症性疾患の媒介に関与している。Dengらは、PAFR拮抗薬が喘息と敗血症の治療薬として臨床試験で失敗していることに着目し、PAFが炎症を引き起こす代替機構を探索した。そして、PAFが炎症性サイトカインのインターロイキン1β(IL-1β)とIL-18の産生を誘導することを、最初に微生物産物のリポ多糖(LPS)でプライミングしておいたマウスおよびヒト骨髄系細胞で明らかにした。画像解析とウエスタンブロット解析では、PAFがNLRP3インフラマソームとして知られる細胞質の多タンパク質複合体の会合と活性化を特異的に誘導し、その結果として酵素カスパーゼ1の活性化と前駆型IL-1βおよびIL-18のプロセシングが引き起こされることが示された。骨髄細胞でPAFに誘導されるサイトカイン産生は、NLRP3関連キナーゼNEK7に依存し、NLRP3特異的阻害剤によって遮断された。PAFはLPSでプライミングされた骨髄細胞において、タンパク質ガスダーミンD(GSDMD)のプロセシングを促進した。これは他のNLRP3アクチベーターでも特有にみられる。しかし、細孔を形成するGSDMDの切断産物はPAFに誘導されるサイトカイン放出に必要なかった。In vitro実験では、PAFに誘導されるIL-1β産生はPAFR拮抗薬によってもPafrのノックアウトによっても阻害されなかった。マウスをLPSで腹腔内プライミングしたあとにlysoPAFに曝露させると、血清IL-1β濃度が上昇し、好中球が動員され、腹膜炎を発症したが、これらはいずれもlysoPAFと一緒にNLRP3拮抗薬を投与すると阻害された。特定のノックアウトマウスを用いた実験では、PAFに誘導される炎症にはNLRP3が必要であったが、PAFRには依存しなかった。まとめると、これらのデータは、リン脂質によってNLPR3インフラマソームが活性化されることを示すエビデンスを提供しており、PAFに誘導される炎症のPAFRに依存しない機構を示唆している。

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2019年10月8日号

Editor's Choice

PAFとインフラマソーム

Research Article

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