新しい地図作成法

The new cartography

Editor's Choice

Sci. Signal. 15 Oct 2019:
Vol. 12, Issue 603, eaaz7799
DOI: 10.1126/scisignal.aaz7799

Erin R. Williams

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. J. M. Howden, J. L. Hukelmann, A. Brenes, L. Spinelli, L. V. Sinclair, A. I. Lamond, D. A. Cantrell, Quantitative analysis of T cell proteomes and environmental sensors during T cell differentiation. Nat. Immunol. 10.1038/s41590-019-0495-x (2019).
Google Scholar

G. Voisinne, K. Kersse, K. Chaoui, L. Lu, J. Chaix, L. Zhang, M. Goncalves Menoita, L. Girard, Y. Ounoughene, H. Wang, O. Burlet-Schiltz, H. Luche, F. Fiore, M. Malissen, A. Gonzalez de Peredo, Y. Liang, R. Roncagalli, B. Malissen, Quantitative interactomics in primary T cells unveils TCR signal diversification extent and dynamics. Nat. Immunol. 10.1038/s41590-019-0489-8 (2019).
Google Scholar

J. M. Conley, L. J. Berg, TCR signaling: It's all about the numbers. Nat. Immunol. 10.1038/s41590-019-0520-0 (2019).
Google Scholar

定量的プロテオミクスによって、T細胞活性化により刺激される、これまで認識されていなかった相互作用の地図が作成される。

要約

T細胞活性化は、転写リプログラミングだけでなく、全体的なプロテオームリモデリングも刺激する。Howdenらは、定量的高分解能質量分析を用いた評価により、初代培養T細胞の活性化後に、内在性タンパク質の存在量にいくつかの予期せぬ差異を発見した。たとえば、これまでに報告されていた、T細胞活性化後のヘキソキナーゼ1(HK1)、HK2、受容体チロシンホスファターゼCD45の量の増加は、細胞の大きさを考慮してデータを標準化すると、わずかであった。一方、CD4+およびCD8+ T細胞の両方で、T細胞活性化により、アミノ酸輸送体SLC1A5およびSLC7A5、ミトコンドリア溶質輸送体、さらには自然免疫シグナル伝達分子であるcGAS、STING、TBK1、IRF3の量が大幅に増加した。このアプローチによって、T細胞活性化後の細胞周期調節因子の存在量減少も明らかになり、この減少はmTORC1阻害剤ラパマイシンに影響を受けた。これらのデータから、ラパマイシンがナイーブT細胞の増殖を低下させる一方で、活性化T細胞の増殖は低下させない理由が説明されると考えられる。

全存在量の変化に加えて、T細胞受容体(TCR)刺激後には、タンパク質相互作用が高度に動的である。Voisinneらは、高分解能質量分析と標的遺伝子組換えマウスのT細胞を用いて、TCR刺激後に経時的に生じた、高信頼度の相互作用366個における内在性タンパク質277個の関与を位置付けた。キナーゼNck1、アダプターVav1、ホスホリパーゼPLC-γとの相互作用などの、TCR刺激による相互作用の多くは非常に過渡的で、TCR活性化後30秒以内に形成され、測定を行った次の時点までに解消されていた。タンパク質存在量の情報と、動的なタンパク質インタラクトームとの統合により、膜貫通型アダプターのCD5、CD6、LAX1が、TCRシグナル伝達の阻害に、これまで認められていたよりも重大な役割を果たす可能性が示唆された。同定されたいくつかの予期せぬ相互作用から、TCRシグナル伝達タンパク質は、これまでに同定されていない機能も有する可能性が示唆された。キナーゼLckは、核移行に関与するタンパク質と予想外に相互作用し、FYBIアダプタータンパク質は、RNAのスプライシングと安定性に関与した。総合すると、これらの報告によって、T細胞活性化の動的なタンパク質レベルの評価が、T細胞機能の解明に有用であることが証明されており(ConleyとBergによる解説記事参照)、このことはCAR-T細胞活性化に関する同様の動的評価が必要であることを示唆している。さらに、これらの豊富な情報資源からは、T細胞活性化によって誘導される予想外の変化が同定されており、これによって、特異的な薬理学的阻害剤に応答したT細胞の挙動が説明される可能性があるとともに、自己免疫に対する新規治療法や合理的ながん免疫療法併用の開発の指針となる可能性がある。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2019年10月15日号

Editor's Choice

新しい地図作成法

Research Article

GABAを介した動的な阻害と生存には、発達段階で制御されるKCC2のリン酸化が不可欠

KCC2リン酸化の調節障害は神経回路網機能不全および神経発生病理をもたらす

最新のEditor's Choice記事

2021年10月5日号

T細胞療法のためのIL-2の改善

2021年9月28日号

腫瘍の覆いを取る

2021年9月21日号

レプチンをその標的まで輸送する

2021年9月14日号

免疫寛容のための胆汁酸

2021年9月7日号

インスリンとTreg細胞