糖尿病への煙った道

A smoky path to diabetes

Editor's Choice

Sci. Signal. 22 Oct 2019:
Vol. 12, Issue 604, eaaz9013
DOI: 10.1126/scisignal.aaz9013

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. Duncan, M. P. Heyer, M. Ishikawa, S. P. B. Caligiuri, X. A. Liu, Z. Chen, M. Vittoria Micioni Di Bonaventura, K. S. Elayouby, J. L. Ables, W. M. Howe, P. Bali, C. Fillinger, M. Williams, R. M. O'Connor, Z. Wang, Q. Lu, T. M. Kamenecka, A. Ma'ayan, H. C. O'Neill, I. Ibanez-Tallon, A. M. Geurts, P. J. Kenny, Habenular TCF7L2 links nicotine addiction to diabetes. Nature 574, 372-377 (2019).
Google Scholar

G. Bruschetta, S. Diano, Brain-to-pancreas signalling axis links nicotine and diabetes. Nature 574, 336-337 (2019).
Google Scholar

ニコチンで活性化される脳-膵臓回路は、喫煙者が糖尿病を発症する可能性が高い理由を説明するかもしれない

要約

タバコの中毒成分であるニコチンは血糖値を上昇させることから、長期喫煙者は非喫煙者に比べて2型糖尿病(T2D)を発症するリスクが高い。Duncanらは、ニコチン中毒を増強すると考えられる、脳および膵臓中の転写因子TCF7L2が関与する回路を明らかにした(Bruschetta and Dianoの論文も参照)。TCF7L2のバリアントは複数の民族集団における高いT2Dの易罹患性と強く関連している。TCF7L2はβ-カテニンと結合し、Wnt/β-カテニン経路におけるその役割に加え、GLP-1およびインスリンシグナル伝達経路においても機能している。著者らは、Tcf7l2 mRNAが、ニコチン離脱症状に関与する脳領域である内側手綱核のコリン作動性ニューロンに多く含まれていることを明らかにした。β-カテニン非結合型のTCF7L2を全体に発現しているラット、または内側手綱核内のTcf7l2を欠損しているマウスは、ニコチンに対する反応が亢進しており、ニコチンの自己投与量が増加していた。このような作用は、WntまたはインスリンではなくGLP-1が介在する、内側手綱核内のシグナル伝達を必要とした。対照およびTcf7l2変異型ラットの内側手綱核のニューロンについて、電気生理学的解析、RNAシーケンシング解析および薬理学的解析を行った結果、TCF7L2は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のニコチン誘導性脱感作からの回復を、cAMP依存性に促進することが示された。ニコチン注射によって誘導された血糖値の上昇は、内側手綱核内のnAChRの化学遺伝学的刺激により模倣され、内側手綱核内のGLP-1受容体またはTCF7L2のノックダウンにより元に戻った。トランスシナプス標識法から、内側手綱核から膵臓への神経回路が明らかにされた。ニコチンを自己投与した対照ラットでは、空腹時血糖値の上昇と血中インスリンおよびグルカゴン濃度の増加が認められたが、これらの作用はTcf7l2変異ラットでは認められなかった。このことは、ニコチン投与がグルコース恒常性の障害を誘発したことを示唆している。ひいては血糖値の上昇は、ニコチン中毒を促進し得る作用として、内側手綱核においてニコチンに応答したnAChR電流の大きさを抑制した。このように、内側手綱核におけるニコチンによるnAChRの刺激は、nAChRにフィードバックするグルコース恒常性の変化を誘発し、ニコチン中毒を増強させる可能性がある。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2019年10月22日号

Editor's Choice

糖尿病への煙った道

Research Article

改変されたN-ヒドロキシピペコリン酸合成経路がトマトの全身獲得抵抗性を増強する

CD45はT細胞におけるシグナル伝達のゲートキーパーとして機能する

代謝静止状態の誘導が移行性B細胞から濾胞性B細胞へのスイッチを定義する

最新のEditor's Choice記事

2021年10月5日号

T細胞療法のためのIL-2の改善

2021年9月28日号

腫瘍の覆いを取る

2021年9月21日号

レプチンをその標的まで輸送する

2021年9月14日号

免疫寛容のための胆汁酸

2021年9月7日号

インスリンとTreg細胞