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機械的感知が代謝的にがん細胞を動かす

Mechanosensing metabolically moves cancer cells

Editor's Choice

Sci. Signal. 18 Feb 2020:
Vol. 13, Issue 619, eabb2935
DOI: 10.1126/scisignal.abb2935

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

V. Papalazarou, T. Zhang, N. R. Paul, A. Juin, M. Cantini, O. D. K. Maddocks, M. Salmeron-Sanchez, L. M. Machesky, The creatine-phosphagen system is mechanoresponsive in pancreatic adenocarcinoma and fuels invasion and metastasis. Nat. Metab. 2, 62-80 (2020).
Google Scholar

M. V. Liberti, K. Birsoy, A link between metabolic energetics and pancreatic cancer mechanosensing. Nat. Metab. 2, 5-6 (2020).
Google Scholar

硬い間質が、膵がん細胞の浸潤と転移を支持する代謝変化を引き起こす。

要約

細胞外マトリックスの硬さが増加すると、機械的シグナル伝達経路が活性化され、多くの場合、転写コレギュレーターYAPの核内蓄積が生じ、多数の細胞種で遺伝子発現パターンが変化する。がん細胞は間質の細胞外マトリックスを再構築し、より硬いマトリックスは腫瘍の進行と転移を促進する。Papalazarouらは、機械的シグナル伝達と、膵腫瘍細胞の転移との代謝的関連を検討した(LibertiとBirsoyも参照)。より軟らかいマトリックス上の膵がん細胞と比較して、より硬いマトリックス上の膵がん細胞では、アクチン構成の増加、YAPの核内蓄積の増加、アルギニンのクレアチン生合成へのスイッチ、クレアチンリン酸/クレアチン比の増加が認められた。クレアチンリン酸は、ATPの速やかな再生に使用される高エネルギーリン酸のリザーバーとして働く、クレアチン-ホスファゲン系の成分であり、クレアチンに対するクレアチンキナーゼ(CK)の作用によって生成される。より硬いマトリックス上の膵がん細胞では、酸化的リン酸化とミトコンドリア融合および伸長が増加した。より硬いマトリックス上の膵がん細胞ではまた、YAP依存的にCkbの発現が誘導された。CKBのノックダウンまたはシクロクレアチン(不十分なリン酸供与体であるクレアチンリン酸アナログ)の投与によって、膵がん細胞の硬いマトリックス上のin vitro遊走とマトリゲル浸潤が減少した。同様に、シクロクレアチン投与またはCKBノックダウンによって、浸潤細胞の仮足で発生する走化性遊走とアクチントレッドミリングの増加が減弱した。さらに、シクロクレアチンは、膵がん細胞のスフェロイドが、みずからの周囲のコラーゲン沈着を増加させるのを防止した。膵がん細胞を脾臓に移植したマウスでは、これらの細胞におけるシクロクレアチン補充またはCKBノックダウンによって、肝臓への転移が減少した。このように、硬い間質によって開始される機械的シグナルが、膵がん細胞の浸潤および転移挙動を支持する代謝変化を引き起こす。

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2020年2月18日号

Editor's Choice

機械的感知が代謝的にがん細胞を動かす

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