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併用療法ではタイミングが重要である
Timing matters in combination therapy
Sci. Signal. 10 Mar 2020:
Vol. 13, Issue 622, eabb5803
DOI: 10.1126/scisignal.abb5803
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
B. Salvador-Barbero, M. Álvarez-Fernández, E. Zapatero-Solana, A. El Bakkali, M. D. C. Menéndez, P. P. López-Casas, T. Di Domenico, T. Xie, T. VanArsdale, D. J. Shields, M. Hidalgo, M. Malumbres, CDK4/6 inhibitors impair recovery from cytotoxic chemotherapy in pancreatic adenocarcinoma. Cancer Cell10.1016/j.ccell.2020.01.007 (2020).
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CDK4/6阻害剤の同時投与ではなく逐次投与によって、化学療法の有効性が向上する。
要約
がんの顕著な特徴は、急速な調節不全の細胞周期である。サイクリン依存性キナーゼのCDK4およびCDK6(重複する機能をもつためCDK4/6と称される場合が多い)は、細胞周期の進行を促進することから、魅力的な治療標的である。いくつかのCDK4/6阻害剤が、現在、一部の型の転移性乳がんの治療においてホルモン療法と併用されており、その他の悪性腫瘍でも、他の治療との併用が検討されている。化学療法は、膵管がん(PDAC)を含む多数のがんの標準治療である。しかし、これまでのところ、これらの阻害剤が化学療法の有効性を高めることは示されていない。Salvador-Barberoらは、この併用戦略のタイミングの変更が、治療成功の鍵となる可能性があることを発見した。PDAC細胞株、患者由来異種移植片、PDACで高頻度に認められる変異を発現する遺伝子改変マウスを用いて、著者らは、最初にタキサン系化学療法またはその他のDNA損傷剤を投与し、続いてCDK4/6阻害剤を投与することによって、腫瘍増殖が緩徐になり、細胞周期の回復が遅延され、倍数性が抑制されることを見出した。トランスクリプトミクス、遺伝子オントロジー解析、DNA損傷修復アッセイを総合すると、逐次投与を受けた腫瘍において、相同組換え(HR)と化学療法誘発性の染色体損傷からの回復に、持続的な障害が認められることが示された。注目すべきことに、CDK4/6阻害剤はさらに、HR欠損を利用するPARP阻害剤への細胞の感受性を高めた。以上の結果から、CDK4/6阻害剤の化学療法との逐次併用(同時併用ではなく)が有効となる可能性があることだけでなく、これらの薬剤によって、HR欠損腫瘍を有する患者以外の患者にPARP阻害剤の使用を拡大できる可能性があることも示されている。