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モータリン(HSPA9)はANT3に媒介されるミトコンドリア膜透過性を低下させることで、BRAF変異型細胞の生存を促す

Mortalin (HSPA9) facilitates BRAF-mutant tumor cell survival by suppressing ANT3-mediated mitochondrial membrane permeability

Research Article

Sci. Signal. 10 Mar 2020:
Vol. 13, Issue 622, eaay1478
DOI: 10.1126/scisignal.aay1478

Pui-Kei Wu1, Seung-Keun Hong1, Wenjing Chen1, Andrew E. Becker1, Rebekah L. Gundry1,2, Chien-Wei Lin3, Hao Shao4, Jason E. Gestwicki4, and Jong-In Park1,*

  1. 1 Department of Biochemistry, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA.
  2. 2 Center for Biomedical Mass Spectrometry Research, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA.
  3. 3 Division of Biostatistics, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA.
  4. 4 Department of Pharmaceutical Chemistry, University of California, San Francisco, San Francisco, CA 94158, USA.

† Corresponding author. Email: jipark@mcw.edu

要約

モータリン[別名、ヒートショックタンパク質ファミリーA(HSP70)メンバー9(HSPA9)またはグルコース制御性タンパク質75(GRP75)]は、キナーゼであるMEKおよびERKの異常活性化に伴いしばしばアップレギュレートされ腫瘍内に誤局在化される、ミトコンドリア分子シャペロンである。本稿でわれわれは、モータリンの枯渇が、変異型キナーゼB-RafV600Eまたはキメラタンパク質ΔRaf-1:ERを発現している腫瘍および不死化正常細胞を選択的に死滅させること、さらに、モータリンのペプチド結合ドメインのMEK-ERK感受性の制御が細胞の生死に重要であることを見出した。プロテオミクス・スクリーニングから、これまで未知であったモータリンの基質であり、かつ細胞の生死に関わるエフェクターとして、アデニンヌヌクレオチドトランスロカーゼ3(ANT3)を同定した。機構的には、MEK-ERKシグナル伝達活性とモータリン機能の亢進は、ミトコンドリアの透過性の制御に反対に収束した。具体的には、MEK-ERK活性は、ANT3とペプチジルプロリル イソメラーゼであるシクロフィリン(CypD)の相互作用を促すことでミトコンドリアの透過性を亢進し、モータリンはこの相互作用を阻害することでミトコンドリアの透過性を低下させた。したがって、モータリンの枯渇はMEK-ERK調節異常細胞において、細胞死を引き起こす程度までミトコンドリアの透過性を亢進した。モータリンを効果的に阻害するHSP70阻害剤誘導体は、そのB-Raf阻害剤耐性子孫細胞を含め、B-RafV600E腫瘍細胞の増殖を培養系およびin vivoで抑制した。これらの所見は、モータリンを標的とすることが、B-Raf変異型またはMEK-ERK駆動型腫瘍における選択的治療戦略としての可能性があることを示唆している。

Citation: P.-K. Wu, S.-K. Hong, W. Chen, A. E. Becker, R. L. Gundry, C.-W. Lin, H. Shao, J. E. Gestwicki, J.-I. Park, Mortalin (HSPA9) facilitates BRAF-mutant tumor cell survival by suppressing ANT3- mediated mitochondrial membrane permeability. Sci. Signal. 13, eaay1478 (2020).

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