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インフルエンザ感染のAからZまで

The A-to-Z of influenza infection

Editor's Choice

Sci. Signal. 31 Mar 2020:
Vol. 13, Issue 625, eabb9158
DOI: 10.1126/scisignal.abb9158

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T. Zhang, C. Yin, D. F. Boyd, G. Quarato, J. P. Ingram, M. Shubina, K. B. Ragan, T. Ishizuka, J. C. Crawford, B.Tummers, D. A. Rodriguez, J. Xue, S. Peri, W. J. Kaiser, C. B. López, Y. Xu, J. W. Upton, P. G. Thomas, D. R.Green, S. Balachandran, Influenza virus Z-RNAs induce ZBP1-mediated necroptosis. Cell 180, 1115-1129.e13(2020).
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インフルエンザウイルスによって産生されるZ-RNAは、ネクロトーシスを刺激し、感染組織において好中球を活性化する。

要約

インフルエンザAウイルス(IAV)の感染によって、RIPK3とその下流エフェクターMLKL、さらにはRNA結合タンパク質ZBP1に依存する形で、ネクロトーシスが引き起こされる。Zhangらは、ZBP1をネクロトーシス経路に結び付ける分子機構を検討した。欠陥ウイルスゲノム(DVG)は、ウイルス複製の不完全な産物である。ZBP1は、感染細胞の核においてDVGに結合した。リン酸化され、活性化されたMLKLがIAV感染細胞の核に出現し、より多量のDVGを産生するウイルス株の感染によって、より少量のDVGを産生するウイルス株が感染した場合と比べて、早期にMLKLリン酸化が誘導された。IAVやその他のオルソミクソウイルスによって産生されるDVGのRNAは、標準的なA-コンホメーションではなく、Z-コンホメーションをとっていた。Z-RNAに結合する能力を欠損したZBP1変異体は、核に移行せず、RIPK3とMLKLに結合しなかった。逆に、恒常的に核に局在化するZBP1変異体を発現する細胞は、IAVの感染時に、野生型ZBP1を発現する細胞と比較して、急速により多く死滅した。IAV感染によって、MLKL依存的に核膜の崩壊が引き起こされ、その結果ネクロトーシス(アポトーシスではなく)が誘導され、これは、核局在MLKLの発現によって、より低速であったが模倣された。核局在MLKLを発現するMEFの上清は、細胞質局在MLKLを発現するMEFの上清と比較して、好中球を大きく活性化した(NET形成により評価)。Mlkl-/-および野生型マウスは、Ripk3-/-またはZbp1-/-マウスよりも、IAV感染を生き延びた数が多かったことから、IAV誘導性の細胞死は、アポトーシスではなくネクロトーシスによって仲介されることが示唆された。Mlkl-/-マウスの肺では、Mlkl+/+マウスの肺と比較して、好中球浸潤が減少し、IAV感染Mlkl-/- MEFの上清は、Mlkl+/+ MEFの上清と比較して、好中球におけるNET形成の誘導の程度が小さかった。これらの結果から、IAVなどのオルソミクソウイルスが産生するZ-RNAによってZBP1が活性化されると、RIPK3およびMLKLを介するネクロトーシス細胞死が促進され、その結果として好中球活性化とそれに続く炎症反応が生じることが示唆される。

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2020年3月31日号

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