3本のヒット、1つの薬

Three hits, one drug

Editor's Choice

Sci. Signal. 07 Apr 2020:
Vol. 13, Issue 626, eabc0532
DOI: 10.1126/scisignal.abc0532

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Fortin, R. Tian, I. Zarrabi, G. Hill, E. Williams, G. Sanchez-Duffhues, M. Thorikay, P. Ramachandran, R.Siddaway, J. F. Wong, A. Wu, L. N. Apuzzo, J. Haight, A. You-Ten, B. E. Snow, A. Wakeham, D. J. Goldhamer, D.Schramek, A. N. Bullock, P. T. Dijke, C. Hawkins, T. W. Mak, Mutant ACVR1 arrests glial cell differentiation to drive tumorigenesis in pediatric gliomas. Cancer Cell 37, 308-323.e12 (2020).
Google Scholar

同時変異に起因することが多い小児脳腫瘍は、真菌アナログで治療できるかもしれない。

要約

小児グリオーマは侵襲性であることがよく知られており、小児脳幹部グリオーマ(DIPG)のサブタイプである患者には有効な治療選択肢はない。治療標的候補を同定するため、Fortinらは、早期腫瘍発生中に同時発現することが多く、かつ腫瘍進行に選択的と思われる一般的な変異を発現しているマウスモデルを作成した。神経前駆細胞で変異型骨形成タンパク質(BMP)I型受容体(ACVR1G328V)を発現しているノックインマウスでは、腫瘍は発生しなかった。とはいえマウスは神経症状を呈し、野生型の同腹仔に比べてオリゴデンドログリア細胞数が多かった。ex vivoで初代培養したグリア細胞の解析から、ACVR1G328Vは血小板由来増殖因子受容体(PDGFRA)の発現を亢進し、オリゴデンドログリア細胞の分化を低下させその増殖を亢進する転写因子を活性化することが明らかにされた。ヒストンH3の変異(HIST1H3BK27M)の導入は、これら表現型に対する協調的な影響があったが、それでも腫瘍を形成させることはなかった。3番目の同時変異をホスホイノシチド-3-キナーゼの触媒サブユニットに加えたとき(PIK3CAH1047R)、これらの表現型は保存され、致死性で高悪性度のびまん性グリオーマの発生が誘導された。治療薬候補を見出すため、著者らは、真菌の天然産物の合成アナログであり、PDGFRAにより誘導されるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路キナーゼの阻害剤であるE6201から検討した。予想外なことに著者らは、E6201はACVR1にも結合してこれを阻害すること、その結果として培養DIPG由来細胞株の生存率を低下させることを見出した。異種移植マウスの末梢にE6201投与したとき生存期間が延長し、このことから患者を治療できる可能性も示唆された。E6201は脳転移悪性黒色腫患者を対象とした臨床試験中であり、また血液脳関門を透過する。したがってもし忍容性が良好であれば、この薬物はDIPG小児患者での使用に検討できるかもしれない。

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2020年4月7日号

Editor's Choice

3本のヒット、1つの薬

Research Article

IFN-κはIFNAR-MAPK-Fos-CHD6軸を介してインフルエンザA型ウイルスの複製を抑制する

内皮を標的とするmiR-15a/16-1クラスターの欠失は虚血性脳卒中の血液脳関門機能障害を改善する

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