タウの伝播を阻害する

Blocking tau propagation

Editor's Choice

Sci. Signal. 21 Apr 2020:
Vol. 13, Issue 628, eabc3149
DOI: 10.1126/scisignal.abc3149

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. N. Rauch, G. Luna, E. Guzman, M. Audouard, C. Challis, Y. E. Sibih, C. Leshuk, I. Hernandez, S. Wegmann, B. T. Hyman, V. Gradinaru, M. Kampmann, K. S. Kosik, LRP1 is a master regulator of tau uptake and spread. Nature 580, 381-385 (2020).
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K. Deinhardt, A receptor that lets dementia-associated tau proteins into neurons. Nature 580, 326-327(2020).
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マウスにおける受容体LRP1のノックダウンによって、タンパク質タウのニューロン間の伝播が減少する。

要約

アルツハイマー病(AD)などのいくつかの型の認知症は、脳における微小管結合タンパク質タウの凝集物の特徴的な沈着および伝播から、タウオパチーとして知られる。ミスフォールド(病原)型のタウは、健常ニューロンにおいて、プリオン様に正常型タンパク質と相互作用し、正常タンパク質のミスフォールディングと、細胞内タンパク質凝集物のあるニューロンから別のニューロンへの伝播を引き起こす(Deinhardtによる解説参照)。ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)がタウの取り込みに関与しており、低比重リポタンパク質受容体(LDLR)がHSPGと相互作用して、同じくADに関連するアミロイドプラークの主成分である、β-アミロイドのニューロンへの取り込みを仲介する。Rauchらは、LDLRファミリーメンバーであるLRP1のノックダウンによって、H4神経膠腫細胞による単量体タウタンパク質、タウオリゴマー、疾患関連変異タウタンパク質の取り込みが阻害されるが、その他のファミリーメンバーのノックダウンではそのような阻害は認められないことを見出した。脂質トランスポーターApoE(LRP1結合パートナー)を含有する培地で細胞をインキュベーションすると、タウのエンドサイトーシスが減少した。変異解析によって、タウとLRP1の相互作用は、タウの微小管結合反復領域のリジン残基に依存することが示された。著者らは、LRP1がニューロンのシナプス後肥厚部に存在することに着目し、CRISPRを用いて、ヒト人工多能性幹細胞由来ニューロン(iPSN)でLRP1存在量を低下させ、タウのエンドサイトーシスの大幅な減少を示した。脳におけるヒトタウタンパク質の伝播の追跡に用いられた、アデノ随伴ウイルスに基づくマウスモデルでは、shRNAを介するLRP1のノックダウンにより、対照shRNAを発現する脳内と比較して、タウの伝播が大幅に減少した。総合すると、これらのデータからは、LRP1が脳内のタウの伝播を仲介することが示されており、この経路がADなどの疾患に対する治療標的となる可能性が示唆される。

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