RSVの侵入の促進

Facilitating RSV entry

Editors' Choice

Sci. Signal. 28 Jul 2020:
Vol. 13, Issue 642, eabd9986
DOI: 10.1126/scisignal.abd9986

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

C. D. Griffiths, L. M. Bilawchuk, J. E. McDonough, K. C. Jamieson, F. Elawar, Y. Cen, W. Duan, C. Lin, H. Song, J.-L. Casanova, S. Ogg, L. D. Jensen, B. Thienpont, A. Kumar, T. C. Hobman, D. Proud, T. J. Moraes, D. J.Marchant, IGF1R is an entry receptor for respiratory syncytial virus. Nature 583, 615-619 (2020).
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受容体IGF-1Rへの呼吸器多核体ウイルスの結合はPKCζに依存する形でウイルスの侵入を促進する。

要約

呼吸器多核体ウイルス(RSV)は、線毛気管支上皮細胞に感染し、利用できる治療法が限られている肺感染症を引き起こす。RSV感染症は、細胞膜でウイルスと相互作用する核小体タンパク質ヌクレオリンにRSV融合(RSV-F)糖タンパク質が結合することによって媒介される。Griffithsらはin vitro感染アッセイによって、RSVが細胞膜に少量のヌクレオリンを有する細胞に効率的に感染することを示した。イメージングフローサイトメトリーでは、RSVとヌクレオリンが細胞表面でパッチ状に共局在することが明らかになり、この共局在は核から細胞膜へのヌクレオリンの輸送と相関した。RSV-Fはインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)と相互作用した。IGF-1で処理するとRSV感染は促進されたが、IGF-1R阻害薬と抗IGF-1R抗体のいずれでもRSV感染は抑制された。RSV感染に対して抵抗性を示す蚊細胞でヒトIGF-1Rを過剰発現させると、蚊細胞へのRSV感染が可能になった。IGF-1R下流のシグナル伝達経路の研究では、キナーゼPKCζを阻害すると、細胞表面に結合するRSVの量が減少し、ウイルス感染が阻止されることが明らかになった。生細胞イメージングでは、PKCζの阻害またはIGF-1RのノックダウンによってRSVと細胞の融合が阻害されることが示された。ヒト気管支上皮細胞由来の培養オルガノイドでは、IGF-1R、ヌクレオリン、RSVは感染後に頂端膜側に共局在したが、そのような分布はペプチド系PKCζ阻害薬によって妨げられた。対照マウスに比べて、RSV感染後第1日にPKCζ阻害薬で処置されたマウスでは、炎症、ウイルス量、肺の症状の軽減が認められた。まとめると、これらのデータはRSVの一次受容体としてIGF-1Rを同定し、RSVの治療標的候補としてPKCζを提示している。

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