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ssRNAがPiezo1とセロトニン合成を刺激する
ssRNA stimulates Piezo1 and serotonin synthesis
Sci. Signal. 08 Sep 2020:
Vol. 13, Issue 648, eabe6352
DOI: 10.1126/scisignal.abe6352
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
E. Sugisawa, Y. Takayama, N. Takemura, T. Kondo, S. Hatakeyama, Y. Kumagai, M. Sunagawa, M. Tominaga, K.Maruyama, RNA sensing by gut Piezo1 is essential for systemic serotonin synthesis. Cell 182, 609-624.e21(2020).
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J. D. Matute, J. Duan, R. S. Blumberg, Microbial RNAs pressure Piezo1 to respond. Cell 182, 542-544 (2020).
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腸はマイクロバイオーム由来のssRNAによってCa2+チャネルPiezo1が活性化されたときにセロトニンを産生する。
要約
骨形成を抑制し、腸の蠕動を亢進し、腸の炎症を増悪させる末梢セロトニン(5-HT)の大部分は、腸内の腸クロム親和性細胞によって産生される。Sugisawaらは、マイクロバイオームによって産生された単鎖RNA(ssRNA)によってCa2+チャネルPiezo1が活性化されると、それがきっかけとなって腸クロム親和性細胞による5-HT産生が引き起こされることを明らかにした(Matuteら参照)。腸特異的Piezo1遺伝子欠損(Villin-Piezo1flox/flox)マウスでは、腸クロム親和性細胞のセロトニン産生の律速酵素をコードするThp1の発現減少が原因で、腸内の5-HTが減少していた。Villin-Piezo1flox/floxマウスでは、骨芽細胞の数の増加と活性増大による骨量の増加、腸の蠕動不良、化学的に誘導される大腸炎への抵抗性がみられたが、これらの作用は5-HT注射によって失われた。RIN14Bクロム親和性細胞の伸展は、Piezo1非依存的に5-HT産生を誘導したことから、Piezo1の機械的活性化では5-HT分泌は促進されないことが示された。抗菌薬によってマイクロバイオームの除去を誘発させると、野生型マウスのみで血清5-HT濃度が低下し、Villin-Piezo1flox/floxマウスの骨量の増加も腸の蠕動不良も回復しなかった。Piezo1を発現するHEK293T細胞は、マウスの糞便から抽出されたRNAに曝露させたときにCa2+流を発生させ(この作用はRNase Aで処理すると消失した)、あるいはssRNAオリゴヌクレオチドであるssRNA40に曝露させたときにもCa2+流を発生させた。ssRNA40は、野生型マウス由来の初代培養腸上皮においてCa2+反応と5-HT分泌を誘導したが、Villin-Piezo1flox/floxマウス由来の初代培養腸上皮では誘導しなかった。野生型高齢マウスにRNase Aを結腸注入すると、血清5-HT濃度が低下し、糞便RNAが減少し、骨量が増加した。このように腸は、マイクロバイオーム由来のssRNAによるPiezo1の活性化に応答して5-HTを産生する。