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パルミトイル化と大腸炎
Palmitoylation and colitis
Sci. Signal. 20 Oct 2020:
Vol. 13, Issue 654, eabf2918
DOI: 10.1126/scisignal.abf2918
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
M. Zhang, L. Zhou, Y. Xu, M. Yang, Y. Xu, G. P. Komaniecki, T. Kosciuk, X. Chen, X. Lu, X. Zou, M. E. Linder, H. Lin,A STAT3 palmitoylation cycle promotes TH17 differentiation and colitis. Nature 586, 434-439 (2020).
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転写調節因子STAT3のパルミトイル化と脱パルミトイル化のサイクルを妨げるとマウスにおいてIBDの症状が軽減される
要約
炎症性腸疾患(IBD)は、ナイーブCD4+T細胞から炎症性ヘルパーT17(TH17)細胞への分化の増加を伴う。転写調節因子STAT3はTH17細胞の発生を促進する。STAT3は、細胞膜でキナーゼJAK2によってリン酸化されて活性化し、その後、核へ移行する。タンパク質と膜の会合における翻訳後修飾S-パルミトイル化の重要性に着目したZhangらは、HEK293T細胞およびマウス脾細胞においてSTAT3のCys108がパルミトイルトランスフェラーゼDHHC7によってパルミトイル化され、それによって細胞膜へのSTAT3の動員が促進されることを明らかにした。DHHC7をノックダウンさせると、細胞膜のSTAT3量が減少した一方で、STAT3の核局在量が増加した。STAT3がDHHC7によってパルミトイル化されると、JAK2によるSTAT3のリン酸化および活性化が促進された。アシルプロテインチオエステラーゼ(APT)はタンパク質からパルミトイル基を除去するが、APT2をノックダウンすると、予想外にもSTAT3の転写活性と核局在が阻害された。さらなる実験によって、APT2はリン酸化型STAT3(pSTAT3)の脱パルミトイル化と核移行を非リン酸化型STAT3よりも優先的に促進することが示された。DHHC7を発現させるとマウス脾細胞から発生するTH17細胞の数が増加し、APT2を阻害すると逆に減少した。IBDマウスモデルでは、DHHC7またはAPT2を標的にするとTH17細胞数が減少し、疾患の重症度が軽減した。健康なドナーと比べて、IBD患者では末梢血単核球においてDHHC7とAPT2をコードする遺伝子の発現量が増加していた。著者らは、DHHC7がSTAT3をパルミトイル化すると、STAT3は細胞膜に動員され、細胞膜でJAK2によってリン酸化されて活性化するというモデルを提唱している。pSTAT3はその後、APT2によって脱パルミトイル化され、核局在が促進され、活性が高まる。これらのデータは、この翻訳後修飾サイクルを標的にすれば、炎症性TH17細胞によって引き起こされる疾患の症状を軽減できる可能性があることを示唆している。