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ARCがエラスターゼを解放する
ARC unleashes elastase
Science Signaling 06 Apr 2021:
Vol. 14, Issue 677, eabi8030
DOI: 10.1126/scisignal.abi8030
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
W. M. McKimpson, Y. Chen, J. A. Irving, M. Zheng, J. Weinberger, W. L. W. Tan, Z. Tiang, A. M. Jagger, S. C. Chua Jr., J. E. Pessin, R. S. Foo, D. A. Lomas, R. N. Kitsis, Conversion of the death inhibitor ARC to a killer activates pancreatic β cell death in diabetes. Dev. Cell 56, 747-760.e6 (2021).
Google Scholar
抗アポトーシス性細胞質タンパク質が糖尿病ではアポトーシス促進性核タンパク質になる。
An antiapoptotic cytoplasmic protein becomes a proapoptotic nuclear protein in diabetes.
要約
2型糖尿病における膵臓β細胞のカスパーゼ依存性細胞死には多様な細胞ストレスが寄与している(Onodera and Scherer参照)。カスパーゼ動員ドメインを含むアポトーシスリプレッサー(ARC)は、外因性と内因性のいずれのアポトーシス経路も強力に阻害する。細胞質ARCは通常、小胞体(ER)ストレス誘導性アポトーシスを阻害することによってβ細胞の生存を促進するが、McKimpsonらは、2型糖尿病の状況下では核ARCがβ細胞のアポトーシスを促進することを明らかにした。野生型(WT)マウスでは、ARCはごく一部のβ細胞で核内に存在したが、複数の2型糖尿病の遺伝的マウスモデルでは、大部分のβ細胞に核ARCが認められた。細胞質ARCは多様なERストレスによって誘導されるアポトーシスから培養マウスβ細胞を保護したが、核ARCはERストレス誘導性アポトーシスを促進した。未知の機構を介して、核ARCは複数のserpina1転写産物の発現量を減少させるとともに、その転写産物にコードされ、主にエラスターゼを標的とする細胞外プロテアーゼ阻害因子α1アンチトリプシン(AAT)の分泌量も減少させた。serpina1転写産物を枯渇させる、または外来性エラスターゼを添加すると、ARC依存性のERストレス誘導性細胞死が促進され、活性AATを添加すると、それが阻害された。核ARCも、AAT量の減少も、アポトーシスとは独立して細胞接着を低下させたが、エラスターゼの薬理学的阻害剤で細胞を処理すると、細胞接着は回復した。2型糖尿病患者由来および糖尿病マウス由来の膵検体でもAATの減少が認められ、糖尿病マウスにAATを全身投与すると、β細胞死も膵島の消失も軽減され、高血糖と耐糖能が改善した。これらの知見は、β細胞死の促進におけるARCの予想外の役割を明らかにし、エラスターゼによって媒介される細胞接着の消失を2型糖尿病におけるβ細胞死と関連づけている。