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骨髄系細胞由来HOClは、メラノーマ細胞のIKK/NF-κBをトランス阻害し早期の腫瘍進展を抑制するパラクリンエフェクターである
Myeloid cell-derived HOCl is a paracrine effector that trans-inhibits IKK/NF-κB in melanoma cells and limits early tumor progression
Science Signaling 06 Apr 2021:
Vol. 14, Issue 677, eaax5971
DOI: 10.1126/scisignal.aax5971 8
Tracy W. Liu1, Seth T. Gammon1, Ping Yang1, David Fuentes2, and David Piwnica-Worms1,*
- 1 Department of Cancer Systems Imaging, University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX 77030, USA.
- 2 Department of Imaging Physics, University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX 77030, USA.
* Corresponding author. Email: dpiwnica-worms@mdanderson.org
【要約】
骨髄由来細胞(MDC)のミエロペルオキシダーゼ(MPO)系は細胞性自然免疫の中心である。MDCの活性化によりMPOがファゴソームに分泌され、そこで強力な塩素化オキシダントである次亜塩素酸(HOCl)の産生を触媒する。本稿でわれわれは老齢マウスにおいて、骨髄細胞系譜特異的なMPO-HOCl系が、早期のメラノーマの成長に対する抗腫瘍効果をもつことを明らかにした。正常免疫のMPO+/+マウスを宿主としたとき、同一週齢の同系MPO−/−マウスに比べ、同所に移植したメラノーマの増殖は遅かった。In vivoおよび細胞共培養のリアルタイム生体内腫瘍画像解析から、腫瘍細胞において、MDC由来MPO酵素活性とリガンド誘導性IκBα分解の阻害の間に、細胞間近接性に依存した相関があることを明らかにした。HOClは腫瘍細胞においてIκBキナーゼ(IKK)活性を直接トランス阻害し、それによって核因子κB(NF-κB)の転写活性化を抑制し、代謝経路、細胞周期の進行およびDNA複製に関わる遺伝子の発現を変化させた。一方でHOClはCD8+T細胞において、T細胞の活性化に関連する、イオン輸送ならびにMAPKおよびPI3K-AKTシグナル伝達経路に関する転写の変化を誘導した。MPOは、骨髄系細胞誘因性のサイトカインであるCXCL1およびCXCL5の循環血中濃度を増加させ、CD8+細胞傷害性T細胞による局所浸潤を亢進し、腫瘍増殖を抑制した。全体としてこれらのデータから、メラノーマ細胞においてIKKをトランス阻害し、早期の腫瘍進展において抗腫瘍効果を媒介する低分子傍分泌シグナル伝達因子としての、MDC由来HOClの役割が明らかとなった。
Citation: T. W. Liu, S. T. Gammon, P. Yang, D. Fuentes, D. Piwnica-Worms, Myeloid cell-derived HOCl is a paracrine effector that trans-inhibits IKK/NF-κB in melanoma cells and limits early tumor progression. Sci. Signal. 14, eaax5971 (2021).