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腫瘍内における異なる栄養の利用

Distinct nutrient use in tumors

Editor's Choice

Science Signaling 18 May 2021:
Vol. 14, Issue 683, eabj4738
DOI: 10.1126/scisignal.abj4738

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

B. I. Reinfeld, M. Z. Madden, M. M. Wolf, A. Chytil, J. E. Bader, A. R. Patterson, A. Sugiura, A. S. Cohen, A. Ali, B. T. Do, A. Muir, C. A. Lewis, R. A. Hongo, K. L. Young, R. E. Brown, V. M. Todd, T. Huffstater, A. Abraham, R. T. O'Neil, M. H. Wilson, F. Xin, M. N. Tantawy, W. D. Merryman, R. W. Johnson, C. S. Williams, E. F. Mason, F. M. Mason, K. E. Beckermann, M. G. Vander Heiden, H. C. Manning, J. C. Rathmell, W. K. Rathmell, Cell-programmed nutrient partitioning in the tumour microenvironment. Nature 593, 282-288 (2021).
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33828302/ [PubMed]
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腫瘍微小環境において腫瘍細胞と免疫細胞は差次的に栄養を取り込む。

要約

腫瘍微小環境(TME)にあるがん細胞は、自身の増殖を支えるために好気性解糖系(ワールブルク代謝)を介してグルコースを代謝する。マクロファージやT細胞などの腫瘍浸潤免疫細胞も、グルコースに依存している。グルコースの取り込みは、腫瘍の検出と監視に使用されるPET画像法でモニター可能であることから、Reinfeldらは、PETを用いて多様なモデル由来のヒト腫瘍およびマウス腫瘍を解析した。そして、TMEではグルコースは腫瘍細胞よりも免疫細胞に優先的に取り込まれ、T細胞よりも骨髄系細胞により多く取り込まれることを明らかにした。より詳細なPET解析では、腫瘍免疫細胞と比べて腫瘍細胞は、多くの種類のがんにとって必須のアミノ酸であるグルタミンをより多く取り込むことが示された。担がんマウスをグルタミン輸送阻害薬で処置すると、TMEでの腫瘍細胞によるグルタミン取り込み量は減少したが、グルコース取り込み量は増加したことから、腫瘍ではグルタミン代謝がグルコース代謝を抑制することが示唆された。まとめると、これらの知見は、TME内では別個の細胞種が共通の栄養プールから異なる栄養を優先的に消費していること、そうした選好は細胞に固有のものであること、そして、グルコースの取り込みはグルタミンの取り込みによって調節されることを示している。このように著者らは、グルタミンの取り込みを標的にすれば、TME内の腫瘍細胞代謝を妨害して細胞活性を変化させられる可能性があることを提示している。

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2021年5月18日号

Editor's Choice

腫瘍内における異なる栄養の利用

Research Article

レプチンは発生中の海馬ニューロンにおいてRhoグアニン交換因子β-PIXを介してGABA作動性シナプス形成を増加させる

成長因子依存性のErbB小胞ダイナミクスが受容体シグナル伝達を空間的・機能的に異なるErkプールに結び付ける

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