- ホーム
- がんにおけるCXCL10の良い面
がんにおけるCXCL10の良い面
The good side of CXCL10 in cancer
Science Signaling 24 Aug 2021:
Vol. 14, Issue 697, eabm0109
DOI: 10.1126/scisignal.abm0109
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org
V. Pandey, A. Fleming-Martinez, L. Bastea, H. R. Doeppler, J. Eisenhauer, T. Le, B. Edenfield, P. Storz, CXCL10/CXCR3 signaling contributes to an inflammatory microenvironment and its blockade enhances progression of murine pancreatic precancerous lesions. eLife 10, e60646 (2021).
Google Scholar
前がん性膵腫瘍におけるCXCL10を介するシグナル伝達は、進行を促すのではなく、むしろ抑制している。
要約
膵がんでは、腺房導管異形成(ADM)および 膵上皮内腫瘍病変(PanIN)と呼ばれる前がん病変の発生に炎症性マクロファージが寄与している。タンパク質KRASの発がん性変異の存在下で認められる慢性炎症は、これらの病変の悪性膵がんへの進行と関連することが示唆されている。膵腫瘍生検検体中の炎症性ケモカインCXCL10とその受容体CXCR3の存在量は患者の予後不良と相関していたことから、この軸が治療標的として提唱されてきた。しかしPandeyらは、CXCL10-CXCR3シグナル伝達を標的にしたとき、むしろ悪性進行が促進されることを明らかにした。KRAS変異型の膵がんマウスモデルにおいて、ADMおよびPanIN病変細胞はCXCL10を産生し、これが炎症性マクロファージの浸潤を促し、CXCR3の活性化を介した炎症促進性を持続させていた。CXCL10の産生は、腫瘍微小環境中に(おそらく近傍のT細胞およびナチュラルキラー細胞から)分泌されるインターフェロン-γにより誘導され、膵細胞のJAK-STAT経路により媒介されていた。同所移植したPanINオルガノイドにおけるCXCL10の過剰発現は、炎症性マクロファージの浸潤を亢進し、PanINの成長を抑制した。反対に、浸潤性マクロファージにおいてCXCL10またはCXCR3を阻害したとき、病変の線維化と悪性進行、並びにその後の腫瘍の増殖と関連する、抗炎症性表現型へのシフトが誘導された。これらの知見により、これまで予想されていなかった前がんの膵臓の微小環境におけるCXCL10-CXCR3シグナル伝達の役割が明らかとなった。このように、膵腫瘍に免疫調節治療を使用する際には病期が重要な検討事項である。